2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J20448
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
篠崎 弘毅 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 耐戦略性 / 効率性 / 非準線形選好 / 複数財オークション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は望ましい性質を満たすオークションメカニズムについて研究を行う。今年度は特に効率性と耐戦略性を同時に満足するオークションメカニズムについて、以下の二つの問題を扱った。 第一の問題は、複数単位オークションにおける効率的なオークションメカニズムの設計である。複数単位オークションにおいては、同質な複数財が同時に競売にかけられ、入札者は複数単位落札することができる。まず、選好ドメインがある程度大きく、また限界評価値が非逓減である場合に、効率性、耐戦略性、個人合理性、敗者への支払い非負性を満たす唯一のメカニズムが一般化ヴィックリールールであることを示した。さらに、もし選好ドメインが限界評価値逓減性を満たす非準線形選好をひとつでも含んでいるならば、これら四つの性質を同時に満たすオークションメカニズムが存在しないことを示した。 第二の問題は、より一般的な状況における効率的なオークションメカニズムの設計可能性である。具体的には、複数の異質な財が存在し、かつ各財が複数単位あるような状況を考えた。この問題において、選好ドメインについての”豊富さ”の条件を定式化し、その条件の下でもしオークションメカニズムが効率性と耐戦略性を同時に満たすならば、各個人が獲得した財に対して支払う価格は選好に依存しないことを示した。さらにこの性質を利用し、複数の重要な選好ドメインにおいて効率性と耐戦略性を満たすオークションメカニズムが存在しないことを証明した。具体的には、財が代替財の場合、補完財の場合、代替財と補完財をともに含むような場合、代替財、補完財どちらも存在しない場合において不可能性定理を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、本年度は効率性と耐戦略性を同時に満たすオークションメカニズムの設計可能性を分析する予定だった。分析の結果、二つの異なる環境においてそのようなオークションメカニズムが存在するための条件を導出し、またそのようなオークションメカニズムが存在する場合には、追加的な条件のもとで効率性と耐戦略とを満たす唯一のオークションメカニズムを特定した。したがって、本年度は一定の進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の分析では無視されてきたが、現実のオークション市場においては重要であるような要因がいくつかある。本研究が特に注目している選好の非準線形性(所得効果)もその一例であるが、他には選好の外部性や配分制約が挙げられる。次年度は。そのような条件を組み込んだうえで、効率性と耐戦略性を同時に満たすオークションメカニズムの設計可能性を考察していく予定である。 一方で、非準線形選好の下では、完全な効率性を満たす耐戦略的なオークションメカニズムの設計は困難であることがこれまでの分析で分かっている。そこで、次年度は可能な限り効率性を保ちつつ、耐戦略性を満たすオークションメカニズムを設計していく予定である。
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