2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstructing seasonality in the Jomon and Yayoi diet through isotopic microsampling of dentine
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19J20509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 晴香 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 弥生時代 / 同位体食性分析 / 微量連続サンプリング / 食性の季節変化 / コラーゲン / 炭酸塩 / 雑穀 |
Outline of Annual Research Achievements |
①炭酸塩分析試料の微量化:前処理を簡易化し試料ロスを防げるかを検討するため、炭酸塩分析の通常前処理の過程の同位体比による影響を評価した。その結果、資料によって各試薬が同位体比に与える影響が異なった。これは、資料の埋蔵環境や個体の生態・年齢に依存する汚染が異なるからだと考えられる。各前処理の評価はサンプル数を増やして検討する必要があるが、現時点では通常量サンプルに対して行う前処理を微量サンプルにも適応すべきである。 ②エナメル質・象牙質微量連続サンプリング:オックスフォード大学にてコラーゲンの微量連続サンプリングを習得した。また、ケンブリッジ大学にてマイクロミリング装置を用いた微量炭酸塩試料の採取を学んだ。これはエナメル質の微量サンプリングに応用できる。 ③エナメル質炭酸塩・象牙質コラーゲンの同位体分析を用いたヒト食性分析:縄文時代~弥生時代の食性の変化を調査する目的で、愛知県伊川津貝塚の縄文時代晩期21個体分の人歯資料のエナメル質の炭酸塩分析を行った。その結果、一つの集団として予想していた炭素同位体比のレンジよりも測定値のそれが広かった。特に男性3個体が残りの個体より高い値を示しているため、集団が2つあり帰属する集団によって食性が異なっていた可能性がある。 植物摂取を定量的に評価するために開発中の「エナメル質炭酸塩と象牙質コラーゲンを組み合わせた食性評価モデル(マクロ栄養素モデル)」を検討する資料の一つとして、海生動物とともに雑穀の摂取が考えられる沖縄県の貝塚後期時代後期(8-9世紀)とグスク時代(12-13世紀)の資料を23個体分析した。そのうち平安山原A遺跡について考察する。マクロ栄養素モデルを用いて食性を評価したところ、貝塚時代後期の個体はC3植物と海生貝類を主に摂取していると推定された。一方でグスク時代の個体は、雑穀などのC4植物を摂取していた可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で予定していた①炭酸塩分析試料の微量化、②エナメル質・象牙質微量連続サンプリング、③エナメル質炭酸塩・象牙質コラーゲンの同位体分析を用いたヒト食性分析、④考古資料の調査・収集をすべて行うことができた。②については英国留学において先行研究の研究者と交流したことにより、当初の計画以上に技術の習得が進展した。また、国際学会(IOW-Arch)等にてこれまでの研究成果を発表し、他の考古学者・人類学者からフィードバックを受けることができた。一方で、2019年度末から現在に至るまでコロナウイルスの感染拡大による影響で実験が停止しているため、実験を要する研究を進めることが困難になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
①炭酸塩分析試料の微量化:前処理による試料ロスだけでなく、前処理を行ったマイクロチューブから同位体比測定を行う容器に移す際も試料ロスが起きるため、測定用容器内で前処理を行う、もしくは前処理を行った試料を超純水に溶かした状態で測定用容器に移し、蒸発乾固させることを検討している。 ②エナメル質・象牙質微量連続サンプリング:今後、東京大学総合研究博物館において透過型顕微鏡下での象牙質・エナメル質の成長線の観察、および実態顕微鏡下での成長線に応じたサンプリングを日本の先史時代歯牙資料に対して行う予定である。また、エナメル質のマイクロミリングを海洋研究開発機構(JAMSTEC)にて行う予定である。また、象牙質の微量試料中のコラーゲン分析においては研究者によって前処理方法が異なるが、通常量の試料に対して行っている「ゼラチン化」「濾過による不純物の除去」が微量試料についてもできるかを検討中である。一番問題となるのは試料ロスであり、これについては通常量の試料で用いられる吸引ろ過を、シリンジでの濾過に置き換えることで実行可能か検討する。 ③エナメル質炭酸塩・象牙質コラーゲンの同位体分析を用いたヒト食性分析:来年度微量サンプリングを行った試料についても引き続き行う予定である。また、これまでの分析結果については投稿論文にまとめる。
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