2020 Fiscal Year Annual Research Report
窒素上無保護イミンを用いた非天然アミノ酸類の新規触媒的直接合成法の開発
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19J20621
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 優太 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 窒素上無保護ケチミン / イミン / アミン / 非天然アミノ酸 / ワンポット合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、非天然アミノ酸類合成における中間体として有用な窒素上無保護ケチミンの合成手法を複数確立していた。スカンジウム(III)触媒を用いた手法(Org. lett. 2020)では酸性条件的に窒素上無保護ケチミンを合成する一方で、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)触媒を用いた手法(Org. Process Res. Dev. 2019)では塩基性条件的に窒素上無保護ケチミンを発生可能であることを見出している。これら2つの合成法は相補的な反応条件であり、本手法のワンポット反応への展開を検討するにあたり、共存する官能基や2段階目以降の反応条件に合わせて2つの合成法を使い分けることで、より多様な含窒素化合物合成ルートの開発が期待できる結果を得ていた。 本年度は、前年度に開発した窒素上無保護ケチミン合成法を非天然アミノ酸類縁体の合成へと展開した。窒素上無保護ケチミンを出発原料とする既存の反応は、単離、精製した窒素上無保護ケチミンを用いる反応がほとんどであり、単離、精製が困難な不安定ケチミンの適用例はほとんどなかった。前年度に開発した窒素上無保護ケチミン合成法について、副生成物が安定で低反応性である利点を生かしたワンポット反応への応用が容易に可能であることを見出した。今回、Strecker反応に代表されるα-アミノ酸類縁体を合成する複数の反応について、ワンポット反応への展開を達成した。これらのワンポット合成法は単離、精製のプロセスを経ないことから、従来法では適用困難であった様々な窒素上無保護ケチミンが利用可能であり、反応生成物の多様性を大幅に拡大することができた。また、ワンポット反応を検討する過程で、単離したケチミンを用いる不斉反応も新たに見出しており、同時に検討を進めている。現在、複数の論文について投稿準備中であり、令和3年度中の論文出版を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、令和1年に引き続き「触媒的連続無保護ケチミン合成-求核付加反応による非天然アミノ酸類のワンポット新規立体選択的合成法の開発」に関する検討を行なった。 まず、令和1年度までに開発した酸性条件(Sc(OTf)3触媒)および塩基性条件(TBAF触媒)での無保護ケチミンの合成法を基盤に、ケチミン合成と続く触媒的不斉求核付加反応をワンポット(同一フラスコ内)で行うワンポット反応の検討を行った。ワンポット反応は中間体の単離工程を必要としないため環境調和性に優れるものの、1段階目に用いる試薬や副成生物などが2段階目に影響を与えるため、その実現には困難を伴う。先に開発したケチミン合成の副生成物が安定で低反応性であるため、様々な反応と組み合わせることが可能であり、Strecker反応など、複数の反応とのワンポット反応化に成功し、種々のα-アミノ酸類縁体合成を達成した。また、ワンポット反応化することで、単離・精製が困難な不安定な窒素上無保護ケチミンを求核付加反応の基質として利用することが可能となり、基質一般性を大幅に拡張することができた。さらに、窒素上無保護ケチミンの触媒的不斉ヒドロホスホニル化の開発にも初めて成功し、創薬研究で有用な種々の新規光学活性α-アミノホスホン酸を合成することにも成功した。以上の研究成果は現在論文投稿中および投稿準備中である。 以上のように、提案研究が着実に進展しており、また、いくつかの新たな知見を見出すことにも成功していることから、おおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までで窒素上無保護ケチミンの効率的供給法の開発と、ワンポット合成による非天然アミノ酸類の環境調和的合成を達成した。令和3年度は本反応の適用範囲をさらに拡大して、医薬分野で関心の高い非天然アミノ酸のライブラリー構築と、非天然アミノ酸に限らないさらなるワンポット合成の適用拡大を目指す。また、非天然アミノ酸類縁体に関しては、より利用価値の高い不斉反応への展開と、不斉反応達成のための新規触媒開発をおこなう。
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