2020 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞同時記録と光遺伝学的制御を用いた,適応行動を制御する神経回路機構の解明
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19J20733
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
谷隅 勇太 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 腹側線条体 / 眼窩前頭皮質 / 嗅皮質 / 逆転学習 / 電気生理学的手法 / 光遺伝学的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は,脳が適応行動をとる場面でどのように神経回路を即座に書き換え,行動を制御するのかを解明することである.この目標を達成するため,本年度は主に以下2項目に取り組んだ.
1) 適応行動を制御する嗅覚神経回路機構の解明Ⅰ:匂い刺激を用いたGo/No-Go課題を用いて,嗅覚神経回路内で適応行動の実現に重要と考えられている,ventral tenia tecta(vTT)の電気生理記録を行った.その結果,個々のvTTニューロンはGo/No-Go課題において,動物の移りゆく行動状態(匂い弁別時 → 報酬期待時 → 報酬獲得時)のそれぞれに特異的な応答を示すことを発見した.さらに異なる行動課題においても,vTTニューロン群が連続的な匂い経験を表現することを突き止め,現象の一貫性を示すことに成功した.この研究成果を論文にまとめ,eLife誌に投稿し掲載された.次に,この高次情報が内側前頭皮質からvTTへの入力によって供給されているかを因果的に証明するため,遺伝学的手法を組み合わせて研究を行い,成果を得た.
2) 適応行動を制御する嗅覚神経回路機構の解明Ⅱ:上記と同様にGo/No-Go課題を用いて,嗅覚神経回路内で適応行動の学習に重要と考えられている,nucleus of the lateral olfactory tract(NLOT)の電気生理記録を行った.多くのNLOTニューロンは,Goの匂い刺激に対して興奮応答 / No-Goの匂い刺激に対して抑制応答を示し,行動選択と強く相関した応答を示すことを発見した.さらに,これらのニューロンは報酬獲得時にも強く応答し,匂い-報酬連合関係を表象していたことも発見した.この研究成果を論文にまとめ,iScience誌に投稿し受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた,電気生理データの収集,新たな解析環境の構築,行動データの収集,光遺伝学的手法を用いた実験の運用について,おおむね達成することができた.予想外の事態として,光遺伝学的手法を用いた実験における不具合があったが,結果をもとに再調節を行うことで研究を進展させた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,光遺伝学的手法を用いた神経回路の操作および論文の執筆を行う.これまで収集してきたデータを用いて,新たに構築した解析環境を利用し,現象のニューロン活動および脳波レベルでの理解を目指す.さらに,光遺伝学的手法を用いた実験を運用し,様々な行動データを収集・比較することで,現象の行動変化レベルでの理解を目指す.
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Research Products
(4 results)