2020 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖非コードRNAの新規転写活性化機構の解明とそのゲノムワイドな解析
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19J20773
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
千松 賢史 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 長鎖非コードRNA / クロマチン / 染色体 / 転写制御 / 減数分裂期組換え / 減数分裂 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、転写産物の大部分がタンパク質の情報を含まない非コードRNAと総称される転写産物であることが明らかになりその機能について世界的に研究が進められている。当研究室では分裂酵母fbp1遺伝子座において、転写活性化に先立って、遺伝子上流非コード領域からの非コードRNA転写によってクロマチン再編成が誘導される機構を発見し(Hirota et al. Nature 2008)、mlonRNAと名付けその制御機構の研究を進めている。その研究過程でmlonRNAの転写必須エレメントを発見し(senmatsu et al. Sci. Rep. 2019)、mlon-boxと名付けた。本研究課題では、独自に特定したmlonRNAの転写必須エレメント(mlon-box)に結合するタンパク質を同定し、非コードRNA転写に共役したクロマチン再編成によるゲノム機能制御の分裂酵母ゲノム内における普遍性の検証を目的としている。 昨年度はゲノム解析の結果得られたmlon-boxと減数分裂期組換え部位が有意にオーバーラップする部位において、mlon-boxと減数分裂期組換えの関係性について解析した。本年度はこれまで得られた知見を論文として発表した(Senmatsu et al. Commun. Biol. 2021)。さらにmlon-box結合因子を特定する実験系の構築やmlon-boxと減数分裂期組換えについてより詳細な解析に取り組んだ。特にfbp1領域では減数分裂期組換えに必要なDNA二重鎖切断(DSB)の導入がmlonRNA転写と相関していたこと。またこれらの現象が環境ストレスによって引き起こされることを示唆するデータを得ることができた。このように「環境ストレス→mlonRNA転写→転写や組換えといったDNA上の反応制御」という普遍的な機構が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、1.独自に特定したmlon-boxに結合するタンパク質の同定、2.mlon-boxに誘導されるRNA転写によるゲノム機能調節機構の普遍性の検証、という2つの柱から構成されている。サブテーマ1についてmlon-boxを含んだオリゴDNAと分裂酵母細胞抽出液を混合し、mlon-box結合因子を精製する実験の構築のための条件検討を行った。buffer条件は検討できたが、実験系完成には至っていない。次の手段としてジェネティックスクリーニングによる方法も検討している。サブテーマ2については昨年度の研究で大きく進展しており今年度は論文発表も行えた。さらにfbp1領域における減数分裂期組換え研究によって、減数分裂期の組換え部位が環境の変化によって影響を受ける可能性を見出し、その機構にmlonRNAなどの非コードRNA転写が関わっている新たな研究テーマに発展していく可能性が感じられた。 このようにサブテーマ1の進捗状況においてはゆっくりであるものの、サブテーマ2については今年度も大きく進展しているため全体として本研究は概ね順調に進行していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
サブテーマ1のmlon-box結合因子の特定はジェネティックスクリーニングの手法も同時に検討し進めていく。サブテーマ2に関しては環境ストレスと減数分裂期組換え部位の関係性をChIP-seqやRNA-seqなどを活用してゲノムワイドに研究を進める。
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Research Products
(4 results)