2019 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性有機銅(III)を活用した新規触媒的不斉ホウ素化反応の開発
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19J20823
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小澤 友 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 不斉反応 / ホウ素化反応 / 銅触媒 / 量子化学計算 / 配位子設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、不斉配位子のデザインによる光学活性な新規有機ホウ素化合物の合成、およびその新規合成法を開発することである。光学活性な有機ホウ素骨格は医薬品の部分構造として用いられている他に有機合成における有用な合成中間体であると認識されている。特に安価な銅を触媒としてこのような新規の光学活性有機ホウ素化合物を合成する手法の開発は重要な課題である。このような背景のもと、本年度では以下の成果を得た。 1. 不斉配位子の最適化によるラセミ体アルキルハライドのエナンチオ選択的ホウ素置換反応(Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 11112): ラセミ体の第二級ベンジルハライドに対して不斉配位子を有する銅触媒存在下でホウ素化試薬を作用させることで立体収束的に光学活性なホウ素化合物が得られた。さらに計算化学を用いてエナンチオ選択性の発現機構について詳細を調査した。その結果、立体障害に加えてファンデルワールス力のような弱い力がラジカル種のエナンチオ面認識に重要であることが分かった。 2. 非共有結合性相互作用を用いた不斉配位子のデザインによる環状アリル求電子剤の直接エナンチオ収束ホウ素置換反応(submitted):非共有結合性相互作用を用いた配位子の配座規制戦略に基づき新規配位子を設計、合成した。また、本配位子をラセミ体の六員ヘテロ環に対しする直接エナンチオ収束ホウ素化反応に適用し、高エナンチオ選択的に環状アリルホウ素化合物を得た。さらに、量子化学計算および機械学習を用いて反応機構を詳細に調査した。その結果、エナンチオ選択性を決定する遷移状態における配位子の不斉場の変化がエナンチオ選択性の向上につながっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、「銅(I)/ジボロン触媒系によるアルケンの不斉ハロボレーション反応の開発(平成31年度予定)」を今年度までの研究目標として掲げていたが、「1. ハロゲン化アルキルに対するエナンチオ収束的なホウ素化反応の開発(平成31年度から令和2年度予定)」に関して先に進展があったため1に関する研究を先行して行った。その結果、第二級ハロゲン化アルキルに対する不斉ホウ素置換反応の開発を達成した。特に計算化学を用いた解析によって配位子と基質の間におけるファンデルワールス力を含む非共有結合性相互作用が反応の選択性の制御に重要であることを見出した。さらに、研究を遂行している中で、本研究の目的の一つである新規不斉配位子のデザインを用いて新規反応「2. 六員ヘテロ環の直接エナンチオ収束的不斉ホウ素置換反応」の開発を達成した。これによって得られる不斉ホウ素基を持った光学活性なヘテロ環は医薬品などの生理活性物質の合成に有用な合成中間体になると考えられる。また、量子化学計算および機械学習を用いた新規の反応機構解析手法の開発も行った。このように、当初研究計画を超えて研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画については、「銅(I)/ジボロン触媒系によるアルケンの不斉ハロボレーション反応の開発(平成31年度予定)」を集中して行っていく。また、先に述べた「1. ハロゲン化アルキルに対するエナンチオ収束的なホウ素化反応の開発(平成31年度から令和2年度予定)」に関しては継続して研究を行い、第三級ハロゲン化アルキルへの適用を目指す。さらにこれらに関して十分に進展が見込まれた場合には前倒しして「ホウ素基を有する中員環trans-シクロアルケンの触媒的不斉合成法の開発(平成31年度から令和3年度予定)」に着手する予定である。
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