2019 Fiscal Year Annual Research Report
1電子移動型クロスカップリング反応によるカルボン酸の官能基化反応
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19J20842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 津久志 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | カルボン酸 / ラジカル / 鉄 / アルカリ金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品等の機能性分子中に遍在するエステルやアミドといったカルボニル基の原料として、カルボン酸は入手性・安定性・変換反応の多様性の観点から理想的なビルディングブロックの一つである。そこで、より多様な化合物への容易なアクセスのためにカルボン酸の効率的な修飾法の開発が求められており、配向基等を必要としないカルボン酸の直接的α-官能基化反応の開発は重要な研究課題である。 また、カルボン酸のα-官能基化反応において1,1-エンジオラートは重要な活性中間体であり、より温和な生成法の開発が望まれている。しかし、従来法ではカルボン酸特有のBronsted酸性により化学量論量の外部塩基が必要であり、古典的なイオン型反応を補完しうるレドックス活性な触媒系は未だ達成されていない。 そこで、レドックス活性なLewis酸触媒を用いたラジカル機構によるカルボン酸の直接的触媒的α-官能基化反応の基盤技術を確立するために、ラジカル機構によるカルボン酸の直接的触媒的α-酸化反応の開発を行った。(J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 4517)。本反応は、世界初のラジカル機構によるカルボン酸の直接的触媒的α-官能基化反応であるのみならず、化学量論量の外部塩基を必要としないカルボン酸のエノラート化を達成した世界初の触媒系である。本研究では詳細な反応機構解析を行っており、鉄触媒とアルカリ金属の協働効果によってカルボン酸の効率的なエノラート化が可能であることを解明した。本機構により、本反応ではケトンやエステル、アミドといったカルボニル化合物の共存下におけるカルボン酸の化学選択的なα-酸化反応を達成した。また、本反応は複雑な構造を有する医薬品群に対しても適用可能であり、ユビキタスなカルボン酸のより効率的な分子変換プロセスへの応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
α,α-二置換-α-アミノ酸の合成を指向したカルボン酸の触媒的α-アミノ化反応を達成するための基盤となる、これまで報告例のないラジカル機構によるカルボン酸のα-官能基化が可能な触媒系を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
見出した触媒系を用い、カルボン酸の直接的触媒的α-アミノ化反応をはじめとするカルボン酸の様々な修飾反応の検討を行う。また、反応機構解析実験より得られた知見を基に配位子および触媒等の設計・検討を行い、触媒活性の向上を目指す。
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Research Products
(3 results)