2019 Fiscal Year Annual Research Report
高圧技術を主とした欠陥制御によるペロブスカイト関連構造高速プロトン伝導体の探索
Project/Area Number |
19J20849
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川森 弘晶 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / プロトン伝導体 / ペロブスカイト / プロトン性欠陥 / 水和 / 高圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体酸化物形燃料電池の低温作動化のため、高いイオン伝導度を有するプロトン伝導体の開発が望まれている。イオン伝導度は一般的にキャリア濃度と移動度で表される。本年度はキャリア濃度つまりプロトン量に注目した研究を主に進めた。 Ba-Sc系酸化物に着目し、原料物質の形態や組成を吟味しつつ高圧合成を行なった。その結果、処理条件を調整することでプロトン量の異なる複数種類のペロブスカイト型材料の合成に成功し、一般に用いられるプロトン伝導性ペロブスカイト型材料より数倍プロトン量が多い試料も得られた。従来、プロトン固溶による微視的なひずみがプロトンの安定性や伝導に寄与することが第一原理計算などから議論されていたが、本研究で作製した試料はプロトン量の増加に伴い巨視的にも対称性が変化していた。また、プロトン量の増加により新たにカチオン欠陥が生じた。伝導度は最大で> 0.001 S/cmが得られたが、カチオン欠陥によって生じるプロトンの伝導経路上の不等価なプロトン位置がプロトン伝導を妨げていると考えられる。このことについて、第一原理計算によるプロトンのエネルギー計算を行っている。さらに、脱水温度付近では伝導度が急激に減少する特異な挙動が観察された。脱水により酸素欠陥が多数生じるため、酸素欠陥によるプロトン伝導の阻害がこの原因であると考えている。 上記の研究とは別に移動度を高める研究も行っている。薄膜での作製を考えており、成膜と伝導度測定には成功したので、今後条件を詰める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトン量はプロトン伝導性を左右する重要な要素である。本研究により、従来成し得ていないプロトン量を有するペロブスカイト型酸化物の作製に成功し、その構造安定性や伝導度を評価できたことは、プロトン量の増加を方針とした研究に対して有用な知見であると考えられる。どの程度の水和量までペロブスカイト構造を維持することができ、どの欠陥がプロトン伝導を阻害するかを理解することは、今後の重要な材料設計指針につながる。また、本研究で用いた手法はある程度プロトン量を調整することができるため、水和の中間構造を段階的に得ることができた。この手法は他の構造の材料探索にも有効だと考えられる。手法に関してもペロブスカイト型プロトン伝導体の新たな知見に関しても研究が順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
高濃度のプロトンを有効に用いるには、プロトン伝導の阻害要因となっているカチオン欠陥を生じさせてはならない。これまでの知見からカチオン欠陥が生じない組成を選択することで高伝導度が得られると考えられる。 また、プロトン濃度と同様に重要な要素である移動度を高める研究についても、申請書に記載した方策で推進する予定である。高伝導度が得られた場合は分光学的手法によるメカニズムの解明を考えている。
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