2019 Fiscal Year Annual Research Report
三価と五価のヒ素を分別定量可能な新規光学的ヒ素バイオセンサーの開発
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19J20864
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松永 光司 北海道大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ヒ素 / DNAアプタマー / ナノ粒子 / 地下水 / 化学種分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒ素(As)は人体に有害な金属の一つであるが,世界各地の土壌に存在するため地下水からも検出される.そのため,飲用水中のAsを除去してAs濃度が低下したことを定期的に検出する必要がある.しかし,現在のAs分析方法は操作が煩雑かつ分析装置が大型で高価であるなどの問題点がある.また,市販の簡易As分析キットはAsの化学種毎(As(Ⅲ)とAs(Ⅴ))の検出は不可能である.環境中のAsは主に上記の2種類であり,As(Ⅲ)はAs(Ⅴ)よりも約100倍毒性が高いため,Asの化学種毎の分析は正確な毒性評価に不可欠である.本研究では簡易かつ低コストで地下水中のAs(Ⅲ)とAs(Ⅴ)を検出できる手法の開発を行う. 第一に本簡易As(Ⅴ)測定手法を開発する上で必要な測定条件の検討を行った.検討項目は使用する参加セリウムナノ粒子の種類,蛍光色素修飾一本鎖DNAの塩基長,酸化セリウムナノ粒子及び一本鎖蛍光色素修飾一本鎖DNAの濃度とした.測定条件の検討後,検量線を作成した.その結果,先行研究で提案された手法よりも低い検出限界値が得られ,従来法よりも低濃度のAs(Ⅴ)の検出が可能になった.これらの研究成果をWET2019,日本分析化学会第68年会,化学系学協会北海道支部2020年冬季研究発表会,第54回日本水環境学会年会において学会発表をした.学会で得られたコメント等を参考にして,現在はAs(V)以外の各イオンに対しての選択性試験,及び実際の地下水中のAs(V)の濃尾を本手法で測定可能かどうかの検証を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は開発例のないアニオン性有害金属の一つである五価のヒ素(As(Ⅴ))の簡易分析法の開発である.As(Ⅴ)に関しては,これまでに分析感度に著しい影響を与えるパラメータ(セリウムナノ粒子の種類,蛍光色素修飾一本鎖DNAの塩基長,酸化セリウムナノ粒子及び一本鎖蛍光色素修飾一本鎖DNAの濃度)について検討した.多大な努力の末に先行研究よりも低い検出限界値を達成するなど,当初の計画以上に進展できた. 三価のヒ素に関しては,昨年度までに得られたデータをまとめ,論文を投稿し,2019年の1月に論文が掲載されたところであるが,引き続き追加実験を行い,さらなる性能の向上も図っているところである.具体的には蛍光分光法と電気化学的手法を用いたセンサー開発を試みている. 以上より本研究は当初の計画以上に進展しており,さらに得られた実験結果から,当初計画していた年次計画のうち一部を省略できるだろうと考えられ,計画の前倒しも行えると期待している.このまま研究を継続すれば,当初掲げた研究目的を達成可能だと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までは,簡易As(Ⅴ)測定手法を開発する上で必要な測定条件の検討を行った.検討項目は使用する酸化セリウムナノ粒子の種類,蛍光色素修飾一本鎖DNAの塩基長,酸化セリウムナノ粒子及び一本鎖蛍光色素修飾一本鎖DNAの濃度とした.測定条件の検討後,検量線を作成した.その結果,先行研究で提案された手法よりも低い検出限界値が得られ,従来法よりも低濃度のAs(Ⅴ)の検出が可能になった. 今年度は実際の環境サンプル中のAs(Ⅴ)を測定することで,我々が開発した簡易As(Ⅴ)測定手法の評価を行う.具体的には,本簡易As(Ⅴ)測定手法をAs(Ⅴ)以外の様々なイオンに対して行うことで選択性試験を実施し,As(Ⅴ)以外の物質と反応するかどうかを確認する.次に,As(V)を含まない地下水にAs(Ⅴ)を添加した擬似地下水,及び自然由来のAs(V)を含む地下水に対して本手法を適用し,前者は実際に添加したAs(Ⅴ)濃度と,後者はLC-ICP-MSなどで測定したAs(Ⅴ)濃度と比較する.また,As(Ⅴ)以外の物質と反応することが判明した場合,As(Ⅴ)以外で反応した物質を除去可能な前処理法の開発,及び本簡易As(Ⅴ)測定法に適用可能かどうか検討する.その後,これまでに開発した簡易As(Ⅲ)測定手法を組み合わせることで,環境中のAsについて化学種ごとに測定可能かどうかの検討に着手する.
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Research Products
(10 results)