2020 Fiscal Year Annual Research Report
感覚処理感受性に注目した大学生の抑うつ低減モデルの検討:健康教育への応用に向けて
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19J20902
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
矢野 康介 立教大学, コミュニティ福祉学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 感覚処理感受性 / Highly Sensitive Person / 環境感受性 / 抑うつ傾向 / メンタルヘルス / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)の個人差に注目し,抑うつ傾向の低減に向けた健康教育を行うための基礎的知見を提供することを目的としている。令和2年度は,前年度までの進捗や国外の研究動向を踏まえ,以下に示す2件の研究を行った。 第一に,「個々人はSPSの程度に応じて3つの群(SPS低群・中群・高群)のいずれかに属する」ことを示唆した国外の知見が(e.g., Lionetti et al., 2018),日本人大学生においても再現されるかどうかを検討した。全国の大学生に横断的質問紙調査を行い(N = 1,977),SPSの程度を測定した。潜在クラス分析を行ったところ,3つの群を想定したモデルが支持された。また,対象者の基本属性(性別,年齢)を統制したうえで各群におけるSPSの程度を比較したところ,すべての群間に有意な差が示されたため,各群はSPS高群,SPS中群,SPS低群と解釈された。したがって,日本人大学生を対象とした場合でも,国外の知見が再現された。 第二に,上記3つの群において,抑うつ傾向の低減に対して効果的なストレス対処方略を検討するため,全国の大学生692名に自由記述調査を行った。得られたデータについて,共起ネットワーク分析を行ったところ,SPS低群では【情動制御】【友人への情緒的・道具的サポート希求】,中群では【前向きな思考】【友人への道具的サポート希求】,高群では【前向きな思考】【感情の表出】【情動制御】【情緒的サポート希求】といった方略が,それぞれ抑うつ傾向の低減に有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように,令和2年度は国外の知見が日本人大学生においても再現されたことに加え,SPSの程度に応じた抑うつ傾向の関連要因について,前年度以上に具体的な示唆を得ることができた。特に,自由記述データを用いた探索的なアプローチは,国内外の研究を概観しても行われておらず,新奇性の高い知見であると言える。これらの研究成果を踏まえて,最終年度(令和3年度)には,本研究課題の目的を達成できることが期待される。したがって,令和2年度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,健康教育の現場に対するより具体的な知見を提供するため,3時点の縦断的質問紙調査を実施する予定である。調査では,本研究課題の軸となるSPS,抑うつ傾向に加えて,今年度の調査結果を踏まえ,認知的感情制御,およびソーシャルサポートといった概念に注目する。データの収集後,SPSの程度に基づく3つの群において,認知的感情制御やソーシャルサポートと抑うつ傾向の縦断的な関連について,潜在成長モデルに基づく分析を行う。
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