2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J20932
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 駿介 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 苦味受容体 / TAS2R / 体内組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
苦味は味覚の一つであり、口腔では味細胞に発現している苦味受容体(TAS2R)によって受容される。TAS2Rはヒトで25種類、マウスでは35種類同定されており、各TAS2Rはそれぞれ異なるリガンド特異性を持っている。TAS2Rは多種のリガンドを受容できるものも存在するため、TAS2Rは非常に多くの苦味物質を受容することができる。苦味は主に毒物が有する味であるため、こういったTAS2Rによる多様な苦味成分の検出は毒物を検知して体に取り込ませないようにするための機構だと考えられている。一方、近年体内のさまざまな組織(脂肪組織、小腸や肝臓など)において発現が確認されているが、それらにおける発現プロファイルや機能は詳細に解析されていない。本研究では体内各組織で発現するTAS2Rの働きを調べることを目標に、各組織におけるTAS2Rの発現プロファイルを解析し、さらに対応する細胞株と比較を行った。 マウス正常組織由来のRNA(褐色脂肪組織、白色脂肪組織、骨格筋、小腸、肝臓)を用いてPCR法により35種類のTAS2RのmRNA発現量を調べた。また、マウス株化培養細胞(3T3-L1, C2C12)における発現も同様に解析した。その結果、褐色脂肪組織において12種、白色脂肪組織で11種、骨格筋で10種、小腸で8種、肝臓で7種のTAS2Rの発現を確認した。また、3T3-L1細胞には8種、C2C12細胞には6種のTAS2Rが発現していた。正常組織と細胞株ではTAS2Rの発現プロファイルは異なっていたが、細胞株がTAS2Rを発現することが確認された。このことから、これらの細胞株がTAS2R研究におけるモデルとして使える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は脂肪細胞に発現するTAS2Rの遺伝子やタンパク質の発現を調べた後、候補となったTAS2Rのリガンド特性の解析を行う予定であったが、文献調査からTAS2Rが脂質代謝のみならず糖代謝など他の代謝機能にもかかわっている可能性が示唆された。そのため、脂肪組織(褐色脂肪、白色脂肪)に加え、代謝機能と関係の深い組織である骨格筋、肝臓、小腸から調製したtotal RNAを用いてmRNA発現をRT-PCR法で調べる方針に変更した。その結果、調べた全ての組織においてTAS2Rの発現が確認された。これらの組織に対応する細胞株でも同様にTAS2Rを発現していることが確認できれば、その細胞株をTAS2Rの機能解析に用いることができると考えられたため、白色脂肪組織と骨格筋について対応する細胞株である3T3-L1及びC2C12のmRNA発現も併せて解析を行った。上述のように、本来予定していた脂肪組織に加えて解析対象の組織・細胞を増やして実験を行ったため、当初の予定より時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス体内組織及び細胞株を用いた遺伝子発現解析により発現が確認されたTAS2Rを解析対象として、siRNA法を用いた遺伝子ノックダウンを行い、リガンド化合物を投与した際の細胞機能(脂肪細胞の場合は分化や脂肪合成・脂肪分解など)に与える影響を解析する。細胞レベルでTAS2Rが上述の細胞機能に関わっていることが示唆されたら、個体レベルでの検証を行うため、マウスを用いて同様に解析を行う。しかし、現在までに報告されているリガンド化合物はほとんどが毒物や薬物であるため、食品由来の苦味成分と脂肪や骨格筋などの代謝機能との関係を調べるためには、食品由来の苦味成分の中からTAS2Rのリガンドを特定する必要がある。TAS2Rのリガンド特性はHEK293T細胞にGタンパク質及びTAS2Rを共発現させ、リガンド化合物を投与した際のカルシウム濃度の変化を測定することで評価できるため、文献を参考にしてその評価系を構築し、食品由来の苦味成分のうち、TAS2Rを活性化させるリガンドを特定する。特定したリガンド化合物もノックダウン実験の際の解析対象として用いる。
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Research Products
(1 results)