2020 Fiscal Year Annual Research Report
高炉内の化学反応と構造の破壊を同時に表現可能なコークスの革新的なモデルの提案
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19J20961
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼澤 結 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | solid-gas reaction / gas reaction / gas diffusion / cfd / machine learning / carbon material / metallurgical coke |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,詳細化学反応機構であるGRI-Mech 3.0から計算された水性ガスシフト反応に関わる化学種の正味の反応速度をニューラルネットワーク(NN)に学習させるフレームワークを構築し,反応温度1373 KにおけるNNを作成した.さらに,2019年度まで開発してきたガス化反応シミュレーションに作成したNNを導入し,水性ガスシフト反応がコークスのガス化反応に及ぼす影響を検討した.前者では,水性ガスシフト反応のNNが詳細化学反応機構の結果を概ね良好に表現した.ただ,教師データを作成する際に採用した化学種の組成の範囲外ではNNの予測精度がわずかに低下し,この点はNNの改良の余地と考えられる.また,後者では,H2Oガス化反応と水性ガスシフト反応のみを考慮した0次元の問題でNNを検証したのちに,X線CT像から作成したおよそ3億要素のコークスモデルを対象としたガスの拡散も考慮したガス化反応シミュレーションにて水性ガスシフト反応がコークスのガス化反応速度やコークス近傍におけるガスの濃度分布に及ぼす影響を検討した.0次元問題での検証では,H2ガスが存在する場合はコークスのガス化反応速度が水性ガスシフト反応によって大きくなり,この条件では水性ガスシフト反応の影響が顕著に見られた.一方で,H2ガスが存在しない場合にはコークスのガス化反応速度は水性ガスシフト反応の有無にほとんど依存しなかった.また,X線CT像から作成したコークスモデルを対象とした検討では,H2が存在しない場合には0次元計算と同様にガス化反応速度は水性ガスシフト反応にほとんど依存しなかった.水素が存在する場合については今後実施する予定である.以上のことから,本研究の中核を担う「気相反応モデルの導入」は当初の予定どおりの検討ができたと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は5ステップから構成され,その5ステップは(1)物質移動をともなうコークスのガス化反応シミュレーションの構築,(2)実験によるシミュレーションの妥当性の検証,(3)気相反応モデルの選定とその導入,(4)破壊解析モデルとの練成,ならびに(5)構造の最適化に向けたケーススタディである.申請書にて,1年目(2019年度)に(1),(2)および(3)の選定までを検討し,2年目(2020年度)に(3)および(4)を検討したうえで,3年目(2021年度)に(5)を実施する予定としていた.現在,2019年度は(1)および(2),2020年度は(3)を主に実施し,2019年度には当初予定していなかった数値シミュレーションの拡散項の検討に時間を要したものの,おおむね順調に進展していると考える.一つの理由として,2020年度に購入した計算機により詳細化学反応機構のAIを迅速に作成できたことが挙げられる.また,2020年度に検討の準備を行う予定であった(4)についても,最終的には複雑な多孔質構造を有するコークスを対象に解析する予定であるが,球状の気孔を配置した単純な多孔質モデルで解析可能であることをすでに確認している.さらに,2020年度は(3)を実施していた過程で機械学習に関する知見が得られ,(5)の構造の最適化に関して機械学習を用いて最適化な構造を見出すという新たなアイデアが生まれた.そのため,2020年度は(4)および検討(5)の事前検討が行えたことからも順調に進展していると言える.なお,機械学習による構造の最適化は挑戦であり,もし上手くいかない場合には当初の予定どおり構造をあらかじめ決定したケーススタディで検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまではコークスのガス化反応モデルの構築とその検証に注力し,その他の検討についても最終年度に向けた準備を行ってきた.今後の予定は(4)圧縮破壊モデルの導入および(5)構造の最適化のケーススタディを行う.まず,検討(4)は破壊解析モデルと検討(1-3)で開発してきた物質移動をともなうコークスのガス化反応シミュレーションを練成させる.現状,検討(4)で必要となる破壊解析には研究室保有の計算コードを使用する予定であり,進捗状況に記載したとおり球状の気孔を配置した単純な多孔質モデルで解析可能かを確認したため準備は十分と考える.ただ,破壊解析の計算負荷は流体解析と比較して大きいため,練成する際には破壊解析におけるコークスモデルの解像度を低下させるなどの計算負荷を低減する施策を講じる必要がある.計算資源は東北大学のサイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータおよび研究室保有の計算機を利用可能であり,問題ないと考える.また,(5)については,複数の多孔質モデルをあらかじめ作成し,そのモデルに対してこれまで構築したシミュレーションでそれぞれ解析することを当初予定していたが,2020年度に購入したGPUを搭載した計算機を利用して強化学習などの機械学習を用いて最適な構造を提案することにも挑戦したいと考えている.検討が困難と判断した場合には当初の予定どおりあらかじめ作成したモデルでのケーススタディに方針転換する.2021年度は最終年度であるため,本年度内に検討(5)を達成する予定である.これらの検討と並行して,各検討について国際学会での発表や論文の執筆も進める.
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