2020 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブル高効率太陽電池の創出に向けたモノライク赤外光吸収層の開発
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19J21034
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今城 利文 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 薄膜 / Ge / 多結晶 / 絶縁体 / 低温 / 高移動度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率を誇る多接合太陽電池の汎用性を高めるため、基板に用いる単結晶Geウェハをプラスチック上のGe薄膜に代替することを目的とする。本年度は、当研究室における「固相成長による絶縁体上Ge薄膜合成技術」を下記①~③のように展開した。 ①今回、簡便なドーピング手法である「拡散塗布法」に着目した。複数のP/N型ドーパント(P型: B,Al,Ga /N型: P,As,Sb)を採用し、当研究室で合成した固相成長Ge薄膜にSpin-on-glass法による熱拡散を行った。その結果N型で2桁、P型で3桁の密度変調に成功した。特に、Pを拡散塗布に用いた場合、低温プロセス(< 550 °C)でありながら、高い電気的特性(電子移動度 200 cm2/Vs、電子密度 1E19 cm-3)を達成した。 ②多結晶Geにおける歪を調査した。Geと熱膨脹係数の異なる基板を選定し、界面の影響を除去するためにGeO2下地を挿入した後、固相成長を行った。その結果、多結晶Ge薄膜中の歪が2要因で印加されることを明らかにした。また、圧縮歪をGe薄膜に導入した際、より低い粒界障壁を示すことを発見した。 ③Ge薄膜での分光感度取得を目指し、太陽電池デバイスを試作した。第一に、当初計画していたエピタキシャル法でP/N接合の形成を検討したが、光応答は無かった。したがって、別アプローチとしてP/N各層の物理的連続性をGeO2層挿入により断つことを検討した。シミュレーションにより、デバイス動作に影響を与えないGeO2膜厚を有しながら、空乏化可能な条件を探索した。その結果、多結晶Ge薄膜において初となる分光感度を実証した。 以上、高度化した固相成長Ge薄膜を元に、①伝導型変調、②物理探索、③実デバイス作製を行った。これらの成果は、フレキシブルGeを用いた革新的太陽電池の実現に大きく貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、多接合太陽電池における高効率と汎用性の両立を目指し、光吸収能力に優れたGe結晶をプラスチック上に合成し、ボトム層に応用することを提案した。本年度は、製膜装置の故障により、半年以上にわたり、新規試料を作ることが困難であった。しかし、既存の合成膜を活かす「拡散塗布法」に着目すると共に、これまで為し得なかった多結晶Ge薄膜における幅広いP/Nキャリア密度変調に成功した。 続いて、昨年度研究が進んでいた「下地基板種の変調」の発展に着手した。従来未解明だった多結晶Ge薄膜の歪導入メカニズムを体系化し、さらに、多結晶半導体の特性を左右する粒界障壁への影響をも見出した。本研究は極めてユニークであり、Scientific Reportsへの採択に結実している。 更に、研究計画の最終段階である分光感度の取得にも挑戦した。当初予定していた手法(エピタキシャル法)では成果が得られなかった。しかし、GeO2下部層が多結晶Ge薄膜に与える影響を解明すると同時に、デバイスシミュレータによって太陽電池構造の探索を行った。その結果、「P/N層界面への絶縁膜(GeO2)の挿入」という逆転の発想によって多結晶Ge薄膜で初となる分光感度取得に至った。
これは、フレキシブルな多接合太陽電池実現を大きく進める成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで確立した技術により合成した、各Ge 層の膜厚やキャリア濃度をデバイスシミュレータにより設計すると共に、透明電極としてITOを成膜し、太陽電池を試作する。光生成キャリアをPN 接合の内蔵電位を利用して取り出し、性能指標となる分光感度(出力電流/照射光強度)を評価する。結果をデバイス構造および各Ge 層の結晶性にフィードバックすることで、Ge 層の結晶性と太陽電池特性の相関を初めて体系化すると共に、バルク級の分光感度を実証する。
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Research Products
(16 results)