2019 Fiscal Year Annual Research Report
eEF2Kをターゲットとした新たな循環器疾患治療薬の探索
Project/Area Number |
19J21048
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
兒玉 朋子 北里大学, 獣医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | eEF2K / 高血圧 / 血管弛緩反応 / 内皮由来弛緩因子 / 心機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Eukaryotic elongation factor 2 kinase (eEF2K)はタンパク質翻訳を抑制的に制御するタンパク質キナーゼであり、申請者らはeEF2Kが血管炎症を惹起することで高血圧症の病態進展に関与すること、特異的eEF2K阻害薬A484954が正常Wistarラットの摘出腸間膜動脈において内皮由来弛緩因子産生及び平滑筋の内向き整流性K+チャネル開口を介して血管拡張を誘導することを明らかにした。しかし、eEF2Kの血圧及び心機能制御機構は明らかになっていないため、その解明を目的として検討を行った。 以下に今年度の研究結果の概要を示す。 1) A484954がWistarラットの全身血圧に及ぼす急性作用を検討した。A484954の静脈内投与はbetaアドレナリン受容体作動薬(イソプロテレノール、アドレナリン)誘導性の拡張期血圧低下を増強した。 2) Wistarラット摘出左心房標本を用いて心収縮力、右心房標本を用いて心拍数に及ぼすA484954の影響を検討した。A484954はbeta1アドレナリン受容体を介して心収縮力及び心拍数を増加させることが明らかになった。 3) A484954が本態性高血圧症モデルラット(spontaneously hypertensive rat: SHR)の全身血圧に及ぼす影響を検討した。A484954急性静脈内投与は高血圧を発症している15週齢のSHRにおいて単独で降圧作用を誘導したが、正常対照であるWistar京都ラットの血圧には影響を及ぼさなかった。この作用機序を検討したところ、A484954はbetaアドレナリン受容体を介した内皮由来弛緩因子産生を介して血管拡張を誘導することが明らかとなった。以上からeEF2K活性阻害が高血圧症の治療標的となりうる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のとおり、計画に沿って研究を進め、その研究成果を学会で発表するとともに学術論文にまとめ公表したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで全身血圧、摘出血管及び心臓におけるeEF2Kをターゲットとした高血圧症の病態機序について検討し、明らかにしてきた。血圧は主に血管、心臓、脳の3つの臓器で制御されているため、今後は特に脳(自律神経系を含む)に焦点を当て、交感神経活性や中枢性の昇圧機構について組織・生体レベルで明らかにする。
|