2020 Fiscal Year Annual Research Report
抗HIV薬を指向したアガロフラン類の統一的合成研究
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19J21057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 利也 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 天然物合成 / アガロフラン |
Outline of Annual Research Achievements |
ジヒドロ-β-アガロフラン類は、主にニシキギ科の植物が有するセスキテルペン類であり、共通して特異に縮環した3環性のジヒドロ-β-アガロフラン骨格を有する。また、オイオニミンのような含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類は、アガロフラン骨格上に10個の酸素官能基と11個の連続した不斉中心、およびエボニン酸を部分構造として有しており、有機合成化学的に極めて挑戦的な化合物である。含ピリジンマクロ環を有するアガロフラン類の全合成は未だに達成されておらず、オイオニミンを含む本天然物群の網羅的な全合成を目指す。オイオニミンの全合成には、アガロフラン骨格上に全酸化度が導入された鍵中間体から、エボニン酸の合成法の確立、保護基の選択的な除去、アガロフラン骨格とエボニン酸保護体の縮合反応が鍵となる。 2020年度は、マクロ環フラグメントであるエボニン酸の効率的な新規合成法を確立した。続いて、エボニン酸保護体とアガロフラン骨格を有する合成中間体との縮合を実現した。まず、4つのシリル基を有する鍵中間体に対し、化学選択的にTBDPS基が除去できる条件を見出した。さらにエボニン酸保護体とアガロフラン骨格を有する鍵中間体のC13位での縮合を実現した。これにより、含ピリジンマクロ環を有する高酸化度アガロフラン類の統一的全合成に向けて、重要な課題を解決した。今年度合成を達成した合成中間体は、残る数工程でオイオニミンに変換され得る重要な中間体である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、マクロ環フラグメントであるエボニン酸の効率的な新規合成法の確立、およびエボニン酸保護体とアガロフラン骨格を有する合成中間体との連結を目標としていた。まず、マクロ環フラグメントであるエボニン酸を合成した。次に、マクロ環フラグメントとアガロフラン骨格の縮合に向け、オイオニミンが有するアガロフラン骨格上の全酸化度が導入された鍵中間体に対するTBDPS基の除去を検討した。種々検討の結果、4つのシリル基存在下、TBDPS基のみを化学選択的に除去できる条件を見出し、所望のトリオールを得ることに成功した。オイオニミンの全合成に必要な全酸化度を有するトリオール、およびマクロ環フラグメントの合成を完了したため、C13位での縮合を行った。合成したトリオールとエボニン酸保護体を縮合条件に付すことで、所望の縮合体を良好な収率で得た。さらに、得られた縮合体のアリル基を除去し、カルボン酸に変換した。合成したカルボン酸は、残るマクロ環化、脱保護、アセチル化により、オイオニミンへと誘導可能な合成中間体である。 本成果は、当初の目標を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度合成法を確立した、ジヒドロ-β-アガロフラン骨格を有する合成中間体、およびマクロ環フラグメントであるエボニン酸誘導体から、オイオニミンの全合成を達成する。また、含ピリジンマクロ環を有する高酸化度アガロフラン類の網羅的な全合成を指向し、位置選択的なアシル化が可能な反応条件を確立する。まず、昨年度合成した合成中間体から、マクロ環化に続く脱保護、アセチル化により、オイオニミンを全合成する。続いて、マクロ環化成績体が有する異なる保護基の化学選択的な除去を検討する。一級のTBS基を除去してフラノイル化し、残る保護基の除去、アセチル化を経て、ハイポニンBの全合成を達成する。さらにエボニン酸誘導体以外の含ピリジンマクロ環フラグメントを合成する。複数のマクロ環フラグメントをそれぞれ合成した後、アガロフラン骨格を有する合成中間体と連結し、続く脱保護とアシル化により、マクロ環部位の構造が異なる天然物を全合成する。また、マクロ環を有する中間体から、C1,2,6,8,9,14位の6つの酸素官能基が区別可能な脱保護およびアシル化の条件を種々検討することで、含ピリジンマクロ環を有する高酸化度アガロフラン類の網羅的な全合成を目指す。
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