2019 Fiscal Year Annual Research Report
多施設コホートを用いた特発性肺線維症における新規遺伝子多型の同定
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19J21080
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
中西 智子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 全ゲノムシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性間質性肺炎は年々有病率が増加傾向であり、中でも特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis: IPF)は、特発性間質性肺炎の中で最も頻度が高く、生命予後は約3-5年と悪性腫瘍に匹敵する程不良である。特発性肺線維症は多くの家系内発症が見られ、遺伝率が比較的高いことが予想されているが、疾患感受性遺伝子の全貌は明らかとなっていない。以下の3つの手法で新規疾患感受性遺伝子の同定を目指した。 (1)家族性肺線維症の家系について全ゲノムシークエンス (Whole Genome Sequence : WGS) を施行し、連鎖解析を行った。その結果、過半数の家系において新規の稀な遺伝子変異を同定し、家系内発症者にのみ共有されていることを確認した。 (2)今年度、約100例のWGSを追加で施行した。合計約150検体のIPF患者と約3000人の対照群を用いたゲノムワイド関連解析を行うため、パイプラインの樹立を行った。具体的には変異のコールを終え、サンプルと変異のクオリティーコントロールを施行した。 (3)欧米IPF患者のサマリーゲノムデータ、その他のマルオミックスデータを参照し、メンデリアン・ランダマイゼーションという統計的手法を用いてIPFと因果関係を示す物質の推定を目指した。1000種類以上の候補物質についてハイスループットスクリーニングを行った結果、IPFの原因となりうる候補物質の同定に成功した。さらに、実際のIPF患者と対照群の血清を用いて候補サイトカインを定量し、疫学的検証も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度中に家系解析を終え、新規の遺伝子変異を同定することができた。またゲノムワイド関連解析にあたってのパイプライン樹立も完了しており、全体的に概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度中にゲノムワイド関連解析の完了を目指す。得られた候補遺伝子について、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなどマルチオミックス情報を統合することで、統計学的検出力を上げ、原因遺伝子の同定/絞り込みを目指す。また日本人のみならず、欧米の大規模な研究結果との比較、メタ解析をすることで、人種特異的/非特異的な変異についての知見を得る。以上によってIPFの分子生物学的研究の新たな切り口を提案し、創薬に繋げる。また患者さんの臨床データを重視し、統合解析を行うことでバイオマーカーの同定など臨床現場に活かされる研究を目指していく。
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