2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19J21092
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
出原 俊介 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 圧電アクチュエータ / 超音波モータ / マイクロアクチュエータ / ビジュアルフィードバック / オートフォーカス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,立方体型小型リニア超音波モータの高出力化検討および薄型リニア超音波モータの開発,そして予圧方法について検討を行った. 大きさ約2mm立方のマイクロリニア超音波モータの推力を高めるために,ステータの再設計を行った.まず,一次伸縮モードと二次伸縮モードの固有振動数を一致させるために奥行を選択し,穴径を変えてもそれらの共振周波数の一致が保たれることを確認した.次に,モータの性能の指標となるパラメータとして,ステータの振動速度と等価関係である電流値に着目し,より高い電流が流れる穴径を検討した.その結果,穴径が大きいほどエネルギ密度の高いステータを設計できることが明らかとなった.実際にモータを作製し評価を行ったところ,最大で約40mNの推力と約1 μmの分解能を実現した. 薄型リニア超音波モータの開発では,スマートフォンのような薄型カメラデバイスのオートフォーカス機構に応用できるリニア超音波モータを開発した.ステータは中空の矩形金属と8枚の圧電素子で構成され,ステータの厚さがレンズ(スライダ)の厚さ以下でも,直線運動を生成することができる.作製したモータの大きさは縦4.5mm×横4.5mm×厚さ0.9mmで,12.9 mNの推力と92.8 mm/sの速度を発揮した.また,このモータに小型レンズを挿入し,イメージセンサの前で実際のレンズの位置決めを実証した. マイクロリニア超音波モータのもう一つの重要な課題として,ステータとリニアスライダの間に押し付け力を与える予圧機構が挙げられる.一般的には,バネやベアリングを用いてステータ・スライダ間に予圧を与えるが,このような方法は小型モータへの適用は難しい.そこで,スリット入りの薄肉円筒をスライダとして採用し,適切な予圧を発生させ推力を向上させた.この予圧方法は,モータの大きさを小型に保ちつつ,適切な予圧を与えることがでる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに駆動原理が異なる二種類の小型リニア超音波モータを開発し,マイクロハンドのアクチュエータとして十分な性能を発揮していることを確認している.特に薄型リニア超音波モータは,立方体型のリニア超音波モータと比較して,更なる小型化および高出力化が可能である.また,マイクロリニア超音波モータの予圧機構の開発も行った.予圧機構は超音波モータの出力向上に必要不可欠であるが,バネを用いた機構はモータの大型化の原因となる.そこで.スリット加工を施した薄肉円筒をスライダに用いることで,この問題の解決を図った.試作したスライダは径の大きさを変えることで予圧量を変更することができる.適切な予圧量をステータとスライダ間に与えることで,予圧がない時と比較して約3倍の出力を得ることを確認した. マイクロハンドを直感的に制御するためには,操作者の手の動きを読み取るコントローラと制御システムが必要である.制御システムについては,これまでにイメージセンサを用いたビジュアルフィードバックを用いてマイクロリニア超音波モータの制御を行っている.この制御システムを用いて,薄型リニア超音波モータとイメージセンサを組み合わせた,オートフォーカスのデモンストレーションを行っており,マイクロロボットハンドの制御システムへの応用も可能である.超音波モータの制御は印加する交流電圧の周波数,電圧振幅,位相差によって制御することができる.今後は繰り返し精度も高い印加時間を制御することで,マイクロロボットハンドの制御を行う. マイクロフィンガは以前,全長約10mmのマイクロフィンガを試作している.よりスムーズな動作を実現するため,結合部に超小型ベアリングを使用するなどをして改良を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロリニア超音波モータとマイクロフィンガを複数組み合わせることで,マイクロ多指ロボットハンドの開発を行う.多指ハンドは物体に対する接触面積を増やすだけでなく,形状に合わせて自由に指先を配置することが出来る.これにより従来の鉗子やピンセットと比べ,より確実な把持が可能となる.ハンド部は直径10 mm,長さ20 mmの円筒内に収まるよう設計する.フィンガの数は立体のものを安定して把持することができる最少の3本とする.ハンドの構造は直感的な操作ができるよう,人の手に近くなるようにフィンガを配置する.また,直感的な制御ができるようにグローブ型のコントローラの作製も行う. 超音波モータを動かすためのドライバは,現状一つの超音波モータを動かすことしかできない.そこで,複数の超音波モータを動かし,制御することが可能なドライバに改良する必要がある.ドライバはLSI技術で小型化の目途がついているが,印加電圧が高いといった問題がある.コストは上がるが,圧電素子を積層化することによる低電圧駆動も視野に入れて行う. 作製したマイクロロボットハンドは,模擬環境内での評価を行う.評価は市販されている練習用疑似血管を使用して,「位置決め精度」,「応答性」,「把持力」の3項目を主に評価する.ロボットハンドの動作は,比較的制御が容易で超音波モータの動作の繰り返し精度も高い交流電圧の印加時間を変えることで制御する. 本年度の研究のスケジュールは次のとおりである.4~6月にマイクロ多指ロボットハンドとコントローラの開発を行う.また,実験装置の設計と開発も行う.7~9月に実験及びデータの取得を行う.10~12月はロボットハンドの評価を行う.2021年1月からは論文執筆を行い,3月末までに投稿を行う.
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Research Products
(8 results)