2020 Fiscal Year Annual Research Report
らせん状ナノグラフェンの精密合成と分子コイル創出に向けた物性評価
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19J21095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中莖 祐介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | らせん構造 / 多環芳香族炭化水素 / キラル光学特性 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、広いらせん幅を有する拡張ヘリセン誘導体の物性測定および、π拡張[2n]ヘリセニルラジカルの合成に取り組んだ。一つ目の研究課題として、広いらせん幅を有する[5], [7], [9]ヘリセン誘導体の詳細な物性測定を行った。合成を行ったらせん状ナノグラフェン分子の吸収帯は、らせん長を伸長するにしたがって顕著な長波長シフトを示した。観察された長波長シフトは、本分子骨格の大きな有効共役長を示唆しており、分子の構成ユニットであるフェナントレン間に大きな軌道相互作用が働いていることが示唆される。従来のヘリセンは、[16]ヘリセンまでらせん長を伸長した場合においても、吸収端が500 nmよりも短波長に現れることから、有効共役長の小さな骨格を有していると言える。すなわち、らせん幅を拡張することでらせん分子の有効共役長が大きく向上することが明らかになった。次に、二つ目の研究課題としてπ拡張[4],[6]ヘリセニルラジカルの合成を行った。これらの化合物は、閉殻構造をもつπ拡張[2n+1]ヘリセンの合成と同様に、光反応を用いたらせん骨格の構築とDDQを酸化剤として用いた脱水素芳香族化反応を鍵反応として、それぞれ13および14ステップで合成を行った。合成した分子はいずれも大気中カラム精製が可能な安定性を有していた。中性ラジカル分子およびそのカチオン塩について単結晶X線構造解析を用いて構造を明らかにした。結果として、らせん内側の結合交代がほぼ見られない構造を有していることが分かった。観察された構造は、らせん内側においてスピンが強く非局在化している効果に起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、広いらせん幅を有する拡張ヘリセン誘導体について、分光測定および量子化学計算を併用して、その物性について詳細な解析を行った。また、新規安定中性ラジカルであるπ拡張[2n]ヘリセニルラジカルの合成に取り組み、2種の化合物の合成に成功した。今回明らかになった性質は、らせん状グラフェンの科学という分野において大きな知見となるものであり, 当該分野の発展への貢献が期待されため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により, 閉殻構造を有するらせん状ナノグラフェンの物性の詳細な解析を完了したと考えている。今後は, 新規に合成を行ったらせん状ラジカル分子の磁気特性および分光特性の調査を行っていく予定である.
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Research Products
(2 results)