2019 Fiscal Year Annual Research Report
巨大な量子群上の調和解析と分岐グラフ上の確率論の融合的研究
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19J21098
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 僚亮 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 漸近的表現論 / コンパクト量子群 / 測度力学系 / 作用素環 |
Outline of Annual Research Achievements |
漸近的表現論は、コンパクト群の帰納極限として与えられる群の表現論、指標理論であり、分岐グラフと呼ばれる組合せ論的対象の上での確率論を通して研究される。本研究では漸近的表現論の量子群への拡張を目指した。特に、von Neumann環の帰納極限に関する研究とWoronowicz代数と呼ばれる量子群の一つの定式化に関する研究に基づいて、コンパクト量子群の帰納極限の定式化を与えた。この定式化に基づいて、「コンパクト量子群の帰納極限」のユニタリ表現や指標理論も定式化される。特に表現のテンソル積表現を上の定式化に基づいて扱えることで、漸近的表現論と可積分確率論との関係に関して、更なる研究が期待できる。また漸近的表現論におけるspherical関数、spherical表現の理論も量子群の場合に拡張した。量子群の場合でも、通常の群と同様、その漸近的表現論は分岐グラフの上での確率論を通して研究できる。特に帰納極限(量子)群の指標に対して、分岐グラフ上の測度力学系が得られる。さらに指標が指標全体の中で端点になっているとき、対応する測度力学系はエルゴード的で、そのエルゴード的測度力学系は表現論的にも重要な情報を持つ。本研究では、ユニタリ群の量子化である量子ユニタリ群の帰納極限の端点指標に対応するエルゴード的測度力学系の、軌道同型という同値関係による分類を記述した。これはそのまま指標に対応する表現の分類を記述する結果を与えたことになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ユニタリ群の帰納極限の端点指標から得られるエルゴード的測度力学系の分類を記述することは、本研究の当初からの目的であり、それを達成できたことで研究計画が概ね順調に進展していると言える。またコンパクト量子群の帰納極限の定式化を与えたことで、それに基づいて研究の更なる発展も見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
コンパクト量子群の帰納極限の定式化に基づいて、(量子群の)漸近的表現論と可積分確率論との関係をより研究する。特に分岐グラフと呼ばれる対象の上での確率論は、素朴に漸近的表現論と関係し、それと可積分確率論との関係をより研究する。
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