2021 Fiscal Year Annual Research Report
デイヴィッド・ヒュームの方法論及び因果論の虚構主義による統一的再構成
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19J21115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯塚 舜 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2023-03-31
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Keywords | ヒューム / 認識論 / 信頼性主義 / 阻却事由 / 暴露論証 / C. I. ルイス |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度の研究ではヒュームの因果論を認識論の観点から検討し、彼の提示する信念形成プロセスの心理学的説明が、懐疑的結論を導く暴露論証の一部を成していると論じた。暴露論証の前提には、信頼性主義をはじめとする認識的正当化に関する外在主義と、ひとたび獲得された正当化が失われる「阻却」と呼ばれる現象の存在がある。 これを受けて本年度は、特に阻却事由の関係を中心として昨年度に引き続き信頼性主義を検討する研究を行うとともに、メタ倫理学における暴露論証に関わる研究も発表した。前者についての主たる成果は、2021年10月31日にオンラインで開催された哲学会第60回研究発表大会にて発表した「信念的・規範的阻却事由と信頼性主義」である。この報告では、規範的阻却事由と信念的阻却事由を区別する観点から、信頼性主義はどのようなタイプの阻却事由をどのように説明すべきかを検討した。他方で、暴露論証について議論が交わされているのは主にメタ倫理学の分野においてである。そこで、2022年3月に刊行の『論集』第40巻に掲載された論文「C. I. ルイスのメタ倫理学と「善き生(good life)」―認知主義・自然主義的実在論から規範倫理へ」では、プラグマティズムの哲学者C. I. ルイスの仕事を手がかりとして、自然主義の立場からメタ倫理学における暴露論証をどう扱えるかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究がおおむね順調に進展していると評価できる主たる理由は、ヒュームの理論哲学を合理的に再構成する予備段階として、しばしば彼に帰される立場である信頼性主義に関する現代的な議論を参照し、特に阻却事由との関係について一定の洞察が得られた点である。これは、ヒュームの認識論を信頼性主義として、彼の議論をある種の暴露論証として解釈することを試みるとき、解釈され直された彼の議論の妥当性を検討する上で、議論の土台となることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
さしあたりは、引き続き信頼性主義と阻却事由の関係の検討を行う。特に、阻却事由不在条件を組み込んだバージョンの信頼性主義に対して指摘される無限後退の問題を解決するアイデアを2022年5月21日開催の日本哲学会第81回大会で発表する予定である。またこの発表を含め、各学会で報告した内容を論文の形でも公開することを目指す。 さらに今年度からの積み残しとして、L. E. LoebやF. Schmittらの、ヒュームを信頼性主義者として解釈する研究を参照し、これまでに得られた現代の議論に関する知見を踏まえつつ、ヒューム的な信頼性主義と現代の信頼性主義の異同を見定め、彼の認識論上の見解の特徴を明らかにするとともに、因果論における彼の論証との関係を問うことが今後の課題となる。
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