2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21153
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮原 大輝 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 秘密計算 / 暗号プロトコル / 暗号理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は、3本の査読付き国際論文誌と4件の査読付き国際会議採択である。特に重要な成果である①カード組を用いた効率的な金持ち比べプロトコル、②ファイル共有サービスを用いた秘密計算プロトコルについて以下で述べる。 ① 秘密計算において重要なプリミティブの1つである金持ち比べ(大小比較の秘密計算)に関して一定の成果を得た。具体的には、2色のカード組を用いた既存の金持ち比べカードベース暗号プロトコルを発展させ、表面が全て異なるトランプカード組を用いても金持ち比べが実現できることを示し、ブール回路に基づく方式とYaoの構成に基づく方式の2つを与えた。この結果はTheoretical Computer Science誌に掲載された。 ② 本成果は、当初明確に想定していたものではなかったが、本研究課題、すなわちカードベース暗号に基づく新しい秘密計算に密接に関係する成果である。本成果は、通常暗号プロトコルに用いられる、巨大な数の素因数分解問題に代表される計算量的に解読が困難な問題を(明示的に)一切用いず、GoogleドライブやDropboxに代表されるファイル共有(オンラインストレージ)サービスを道具として用いる秘密計算プロトコルを構成できたことである。その構成は成果①の知見に基づき構成され、任意の(1出力)関数を秘密計算できる。提案方式は、アプリとして一般に普及しているサービスを用い、有限体などの代数学知識を一切用いず、ファイルのやり取りは1往復で済むため、暗号の非専門家でも安全性を理解しながら実行できる。この結果は国内会議SCIS2019において公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に加え、ファイル共有サービスを用いた秘密計算プロトコルに関する一定の成果を得たことで、順調に進展していると判断できるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究全体として期待通りに進んでいると考えられ、以下では成果②における課題について述べる。 ファイル共有サービスを用いる秘密計算方式においては、そのサービスに通常備わっている「帯域幅制限機能」を活用することで、秘密計算に求められる安全性を達成している。帯域幅制限機能とは、過剰なネットワークトラフィックを防ぐために導入されるものであり、クラウド上で共有されたファイルの総ダウンロード(DL)量を制限する機能である。例えば、Dropboxに関しては、1つの共有リンクを介して1日当たり合計で20GB以上のファイルがDLされると、即座に共有リンクが無効になることが公式ウェブサイトに記されている。厳密に安全性証明を行うためには、帯域幅制限機能を有するファイル共有サービスとして求められる機能要件を、暗号理論的に形式化する必要がある。その際には、既存研究であるカードベース暗号の計算モデルや、不正開封防止シール付き封筒を用いる暗号プロトコルの形式化手法を参考にする。これらの課題を達成しつつ、提案方式に関する発表を国際会議や論文誌で行うことを目指す。
|