2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21153
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮原 大輝 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | セキュリティ / 暗号 / 秘密計算 / ゼロ知識証明 / カードベース暗号 / ペンシルパズル / 物理暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①秘密計算の一種とも言えるゼロ知識証明に関して一定の成果を挙げ、②物理的なボールと袋を用いる秘密計算プロトコルに関する研究を進めた。 ①昨年度に引き続き、数独に代表されるペンシルパズルの解に対するカード組を用いたゼロ知識証明プロトコルの構成を行った。パズルに対するこれら物理的ゼロ知識証明プロトコルの特徴は、通常コンピュータではなく人間の手で解くパズルの問題に対して、カード組などの物理的な道具だけでゼロ知識証明を達成できることである。本年度は、数独に対する効率的なプロトコルの構成がTheoretical Computer Science誌に掲載された。加えて、フランスの研究グループと共同で進めていたSuguru・Takuzu・Juosanの3つのパズルに対する成果を国際会議SSS2020とFUN2021で公表できた。他のパズルに対する研究がいくつか報告されているため、本研究の実用性と学術的な貢献度は高い。 ②ボールと袋の物理的特性である、袋に複数のボールを入れた途端にボールの順番が(人間の目からは)ランダムになる性質に着目し、3個の袋と6個のボールを用いると、2入力の論理積関数を秘密計算できることを示した。この提案プロトコルを足掛かりに、多入力論理積関数への拡張を行い、ボールと袋に基づく秘密計算プロトコルのモデルを理論の枠組みで形式的に記述した。カードベース暗号でよく用いられるランダムカットといった特殊なシャッフル操作は、本成果では用いないものとした。その点が本成果とカードベース暗号との大きな違いである。ボールと袋の形式化及び実物を用いた実装方法も与えている通り、理論と実用の双方の視点から本成果は高く評価できる。これらの成果はセキュリティ分野で著名な国際会議CSF 2021に採択された。 本年度は以上の成果と合わせ、査読付論文誌4件及び査読付国際会議7件を発表できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、カードベース暗号分野で挙げてきた研究成果の知見を基に、ボールと袋を用いる新しい秘密計算プロトコルを構築でき、本研究課題のタイトル通りの成果を挙げることができた。加えて博士課程の学位を早期に取得できたため、当初の計画以上に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
①のゼロ知識証明については、現在論文誌に別の成果を投稿中である。今後もフランスチームと共同で議論を行い、成果を積極的に公表する。②のボールと袋を用いる秘密計算については、多入力論理積関数に加え、任意の論理回路を計算できる方式を論文中では示しているが、必要なボールの数と実行時間が回路のサイズに対して指数的に増加する課題がある。したがって、より効率的な構成を与えることが今後の課題である。この課題の解決に加え、多数決関数に代表される対称関数に特化したプロトコルの構成を行い、論文誌への投稿を目指す。その際は、カードベース暗号及びPrivate PEZプロトコルに関する既存論文の知見を活用する。
|