2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21165
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
埴原 紀宏 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 団傾理論 / DG代数、DG圏 / Calabi-Yau代数 / 導来圏 / 団圏 / 特異圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
団傾理論において団傾対象を持つカラビ・ヤウ(CY)三角圏は中心的な役割を果たす。そのような三角圏の一般的な構成がCY性を持つ次数付き微分代数(CY DG代数)を用いることによって与えられている(Amiot)。これを以下「(DG代数の)クラスター圏」と呼ぶ。本年度は主に、形式的DG代数に対してそのクラスター圏を記述する研究を行い、主要な結果として以下を得た。 (1) まず(DGでない通常の)CY多元環を微分が0のDG代数とみなすことで、符号を除いてCY性を持つDG代数が得られることを示した。 (2) 主題であるDG代数のクラスター圏を調べる準備として、(非可換)射影空間上の連接層の導来圏を考察した。これがクラスター圏の被覆となっていることを発見し、特に自然な団傾部分圏が存在することを示した。 (3) クラスター圏の導来圏の軌道圏および、Gorenstein環の特異圏としての表示を与えた。導来圏の軌道圏としての表示は、Buan-Marsh-Reineke-Reiten-Todorovによって導入された非輪状箙に対するクラスター圏の表示の類似である。一方、Gorenstein環の特異圏との三角圏同値は、特異圏が団傾対象を持つCY三角圏となるGorenstein環の例を豊富に与える。 (4) pretriangulated DG圏のあるDG自己準同型とそのホモトピー逆から得られる2つのDG軌道圏が擬同値となることを、実用的な仮定の下で示した。この帰結として有限次元代数の導来圏の軌道圏の包絡三角圏について、ある自己同型から得られるものと、その逆から得られるものは三角同値となるという(期待されるべき)事実が従う。上記のクラスター圏とGorenstein環の特異圏の同値は、この結果の応用として得られる。 これらの結果をプレプリント(arXiv:2003.7858)にまとめて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DG代数のクラスター圏に関して、きれいな一般論が構築されているがその構造を具体的に捉えるのは容易ではない。本年度はクラスター圏の、非可換射影スキームの導来圏の軌道圏という比較的分かりやすい表示を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きクラスター圏に関する研究を行う。昨年度の研究により、導来圏や団圏などの三角圏においても、自然な団傾部分圏であって半単純となるものを持ちうることが明らかとなった。特に団傾部分圏の圏自身の性質のみから三角圏を復元することができない例を与えている。一方で団傾対象が半単純に近いある種のカラビ・ヤウ三角圏の構造定理も知られている(Keller--Reiten, Keller--Murfet--Van den Bergh)。これらの定理においては団傾対象どうしの負の次数の拡大が鍵となる。これらを手掛かりとして、昨年度の結果で現れた三角圏の構造定理を与えることを一つの目標とする。
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