2019 Fiscal Year Annual Research Report
単分子接合の高速IV計測による吸着分子の表面ダイナミックスの解明
Project/Area Number |
19J21186
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
一色 裕次 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 表面吸着 / 化学反応 / システム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、私は大きく分けて2つの研究を行った。一つ目は申請書にある通り、単分子のダイナミックスを観測するための装置開発。もう一つは金属と分子の相互作用を一分子レベルで制御する手法の開発である。 一つ目の研究は、計測装置の最適化と金属原子接点のみでの計測まで完了した。まず外部の振動、電磁波による電気的ノイズを自作の除震台と電磁フィルターで除去した。さらに電気回路のグラウンドを一部浮かせることで、高速計測時でもオフセットの少ない電気回路を設計した。時間分解能は基準抵抗で評価し、10k~10MΩの抵抗値では最大で100マイクロ秒まで計測速度を上げられることを確認した。(従来は10ミリ秒)続いて、分子を導入せずに、まず電気伝導度の計測が容易な金接合を用いて、時間分解I-V計測を行った。先行研究で報告されている量子化伝導状態の観測に成功し、電流値も10kHzの電圧掃引に追随していることが確認できた。このI-V計測から私は金接合の整流特性を高速時間分解計測することができ、金接合が破断する直前に整流比が5倍増加することを発見した。この成果は現在、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のFabian先生らと共に論文としてまとめている。二つ目の研究として、分子―金属間の相互作用を制御する手法を探索した。私の最終的な研究目標は高速時間分解能で金属-分子間の相互作用を評価するだけでなく、それらをフィードバックし、接合構造を制御することである。ゆえに、一つ目のハードの構築とは別にフィードバック制御用のソフトウェアの開発も行った。今回私は1,4-Di(4-pyridyl)benzeneという分子を用いて、電極間距離を変調する速度を制御することで、異なる二つの伝導状態の生成比率を変化させることに成功した。本成果は、RCSのPhys Chem Chem Physの雑誌に論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度において,研究課題の目標達成に不可欠な要素技術の開発,ならびに基礎的知見の取得に成功した.初年度ながら,それらの成果はすでに国際学術誌に掲載されている.従って,当該年度の研究進捗状況は,「期待以上の研究の進展があった」と評価する. 2019年度は,始めに,単分子接合における電子輸送現象の高速計測を可能とする装置開発を行った.単分子の計測を可能とする精度,および信頼性を担保しつつ,時間分解能を向上させる難しい課題を,入念な装置設計,計測試験によって解決に導いた.また,単に試験計測に留まらず,金属単原子接点の量子化伝導について興味深い物理現象を見出し,理論物理を専門とする研究者との国際共同研究によって,この起源を解明することに成功している.本成果は現在,論文執筆中である.上記に加え,単分子接合の構造制御法を開発した.複数種存在する単分子接合の伝導状態のいずれかを選択的に形成させることに成功した.この成果は,本研究課題の目標達成において重要な知見を与えるものであり,すでに国際学術誌に掲載されている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度開発した単分子接合の電子状態計測装置を用いて、単分子接合の寿命以下の短い時間以内(0.1msec)に、同一の単分子接合の電極間距離を段階的かつ連続的に変化させながら単分子接合のI-V計測を行う。単分子接合のI-Vから、電極と分子間の電気的カップリングΓおよび軌道エネルギーE0を求め、単分子接合の電子状態を決定する。連続計測を行うことで、単分子接合の形成から接合破断まで、逆に電極間距離を短くしていった際の単分子接合形成から金属接合への移り変わりの過程を調べる。実験では、基板金属と異なる吸着構造を有する1,4-benzenedithiol, 1,4-benzenediamine, 1,4-benzenediisocyanideを用いて、化学結合の種類と電子状態変化の関係を明らかにする。
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Research Products
(7 results)