2019 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応を考慮した超大規模1億原子シミュレーションによる材料破壊の学理構築
Project/Area Number |
19J21195
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 茜 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄鋼材料 / シミュレーション / 分子動力学 / 金属の酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
橋梁、鉄道路線及び発電所などのインフラに多用される金属構造材料において、表面化学反応と応力との相乗効果によって材料の破壊が加速されることが問題となっているため、腐食環境下における金属材料の破壊機構を解明し、さらに高耐食性・高強度を有する革新的な材料の設計指針を構築することが強く求められて いる。そこで本研究では、腐食環境下における金属材料の破壊メカニズムを解明するため、計算科学に基づく金属の応力腐食割れメカニズムに関する研究を行った。 高温・高圧水環境における水素に起因する鋼材の破壊メカニズムを解明するため、反応力場分子動力学法を用いて、高温・高圧水環境における水素侵入のダイナミクス及び水素の侵入に伴う破壊プロセスを検討した。シミュレーションの結果、水分子がOHとHに解離し、鉄と酸素原子の結合による表面酸化が見られた。その後、水及びOHから解離した水素原子は鉄のバルク内に侵入し、粒界に集中した。次に、固溶した水素が破壊に与える影響を明らかにするため、引張り計算を行った。シミュレーション結果により、粒界に集中した水素原子は鉄原子間の結合を弱め、粒界破壊を促進することが分かった。また、発電所で用いられる鉄鋼 材料の酸化皮膜生成プロセスを原子スケールの観点から解明するため、ハイブリッド反応力場モンテカルロ法に基づき開発したシミュレーションコードの有用性を検討し、鉄酸化物表面の原子構造のモデリングを行った。その結果、FeO結晶におけるFe-O 結合長の実験値と本シミュレーションの値とはほぼ一致しており、本手法における酸化物モデリングの妥当性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温・高圧水環境における水素に起因する鋼材の破壊メカニズムを解明するため、反応力場分子動力学法を用いて、高温・高圧水環境において鉄表面に起こる化学反応と破壊メカニズムを検討した。その結果、高温・高圧水環境下における水素侵入のダイナミクス及び水素の侵入が粒界破壊を促進するプロセスを明らかにした。また、鋼材表面において原子スケールでの酸化皮膜生成を再現するため、酸化といった化学反応を扱えるReaxFFポテンシャルとグランドカノニカルアンサンブルに基づくモンテカルロ法の有用性の検討と鉄酸化物表面の原子構造のモデリングを行った。また、開発した手法を用いて異なる酸素分圧における Fe表面の酸化物モデリングを行った。その結果、FeO 結晶におけるFe-O 結合長の実験値と本シミュレーションの値とはほぼ一致しており、本手法における酸化物モデリングの妥当性が確認された。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、水素に起因する鋼材の破壊メカニズムを解明するため、高温・高圧水環境下における・水素侵入のダイナミクス及び水素の侵入が粒界破壊を促進 するプロセスを解明した。また、鉄鋼材料の酸化皮膜生成プロセスを原子スケールの観点から解明するため、ハイブリッド反応力場モンテカルロ法に基づき開発したシミュレーションコードの有用性を検討し、鉄酸化物表面の原子構造のモデリングを行った。その結果、本手法における酸化物モデリングの妥当性が確認された。次年度は、組織構造が鉄鋼材料の力学特性に与える影響を明らかにするため、(1) ボロノイ多面体分割を用い、粒界・複相といった組織構造を扱うことが可能な大規模モデリングプログラムを開発し、(2) 水環境下における大規模多結晶鉄の破壊メカニズムを解明する。
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[Journal Article] Triboemission of hydrocarbon molecules from diamond-like carbon friction interface induces atomic-scale wear2019
Author(s)
Yang Wang, Naohiro Yamada, Jingxiang Xu, Jing Zhang, Qian Chen, Yusuke Ootani, Yuji Higuchi, Nobuki Ozawa, Maria-Isabel De Barros Bouchet, Jean Michel Martin, Shigeyuki Mori, Koshi Adachi and Momoji Kubo
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Journal Title
Science Advances
Volume: 5
Pages: eaax9301
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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