2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21202
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日浦 史隆 九州大学, 歯学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 骨吸収 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
破骨細胞の骨吸収は、破骨前駆細胞から破骨細胞への「分化」と分化した破骨細胞が骨を認識して吸収する「活性化」の2つのプロセスに大別される。破骨細胞 の活性化は破骨細胞が発現するαvβ3インテグリンが骨基質タンパク質を認識する事から始まる。その後アクチンリングと呼ばれる特殊な構造と波状縁を形成し、吸収窩に酸とタンパク質分解酵素を分泌する。非受容体型チロシンキナーゼであるc-Srcを欠損したマウス(c-Src欠損マウス)は、破骨細胞が存在するにも関わらず、骨吸収不全による大理石骨病を呈することから、破骨細胞が骨吸収機能を発現する過程でc-Srcが必須の分子であると考えられている。しかし、c-Srcの下流分子については、幾つか候補分子が示されているものの統一した見解は得られていない。本研究では、c-Srcの下流分子として骨吸収に関与する分子の同定を目的とした。野生型マウスおよびc-Src欠損マウスの脾臓から調製した血球系細胞をマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)とReceptor Activator of NF-kB Ligand(RANKL)で刺激し、破骨細胞を誘導した。c-Src欠損マウス由来の破骨細胞は、野生型マウス由来の破骨細胞と比較して、特徴的なアクチンリングが形成されず、骨吸収能が障害された。今年度は、両マウス由来の破骨細胞からRNAを調製し、RNAseq解析を用いて、両マウス由来の破骨細胞間の遺伝子発現の違いを網羅的に解析した。その結果、野生型マウス由来破骨細胞と比較してc-Src欠損マウス由来破骨細胞において2倍以上発現量が上昇している遺伝子が35 個、逆に発現量が2倍以上低下している遺伝子が180個見つかった。その後、qPCRで検証を行い、候補遺伝子を25個に絞った。現在、25の候補遺伝子とそれらを制御する転写因子の骨吸収への役割を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、c-Src欠損マウスおよび野生型マウスの脾臓から調製した血球系細胞から分化させた高純度の破骨細胞よりRNAを調製し、RNA-seqによる網羅的解析を行い、c-Srcの下流で破骨細胞活性化に関わる可能性のある分子群の同定を行った。 RNA-seq解析において、野生型とc-Src欠損マウスで発現量が2倍以上変化している遺伝子群に関してさらにqPCRで検証を行い、候補の遺伝子を25個まで絞り込んだ。絞り込まれた候補遺伝子の上流配列から共通のシスエレメントを検索し、複数の遺伝子の発現を制御する可能性のある転写因子を探索した。現在、得られた転写因子の候補のうち、文献情報からc-Srcによって制御される可能性のある転写因子「X」に着目し、Xによる選別した遺伝子の発現調節機構とXのloss-of functionおよびgain-of functionを行い、c-SrcとXの関連、またXの骨吸収への関与について解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
① 候補遺伝子群、転写因子「X」の骨吸収への役割を明らかにする 野生型およびc-Src欠損マウス由来の破骨細胞での候補遺伝子群、転写因子「X」、およびリン酸化転写因子「X」の発現量を各抗体を用いて、ウエスタンブロットにて確認する。さらに両マウス由来の破骨細胞での候補遺伝子群、転写因子「X」、およびリン酸化転写因子「X」の局在を免疫染色で確認する。転写因子「X」の阻害剤を用いて、破骨細胞の形態と骨吸収能の変化を検討する。すでに、候補遺伝子群の幾つかと転写因子「X」の発現をRAW-D細胞で確認しているので、各siRNAを用いて発現を低下させ破骨細胞の形態と骨吸収能の変化を検討する。 ② 転写因子「X」の候補遺伝子群の発現調節機構の解明 RAW-D細胞で転写因子「X」の阻害剤またはsiRNAを用いて転写因子「X」の機能を抑制した際に、候補遺伝子群の発現量が低下することを確認する。ゲノム情報をもとに、転写因子「X」によって発現調節される候補遺伝子の幾つかのプロモーターをクローニングし、レポーターアッセイを行い、候補遺伝子が転写因子「X」によって発現調節されることを明らかにする。 ③ 転写因子「X」、および候補遺伝子群の骨吸収への関与の検討 転写因子「X」、および候補遺伝子群の幾つかをクローニングし、ウィルスベクターを構築する。候補遺伝子群、および転写因子「X」の発現ベクターをc-Src欠損マウス由来の破骨細胞に導入し、骨吸収の回復実験を行う。
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