2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島川 典 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、私は、6環性アルカロイドの統一的全合成に向けて、プベルリンCを標的天然物として設定し、その全合成研究を遂行した。まず、前年度までの知見を活用して鍵反応基質の合成ルートを改善した。すなわち、より熱安定性の高いラジカル供与体へと変更し、効率よく鍵反応基質を合成できることを見出した。これにより、鍵反応基質の大量供給が可能となった。続いて、鍵反応である連続ラジカル環化反応の条件最適化を行った。本反応は、1工程で2つの環構造および2つの第4級炭素を含む連続する5つの立体化学を制御可能であるため、プベルリンCの骨格構築に極めて効率的な手法である。ラジカル開始剤の半減期温度、溶媒および反応時間が反応の完結およびその収率に大きく影響することを見出し、再現性の高い環化条件を確立できた。最後に、得られた5環性化合物に対する向山アルドール型の環化反応を実現し、プベルリンCの6環性骨格構築を完了した。本環化反応において、反応点近傍の立体障害が重要な役割を果たすことを見出し、高度に歪んだ環構造の構築を実現した。本6環性化合物は、プベルリンCが有する酸素官能基導入の足掛かりとなる官能基を備えているため、極めて重要な合成中間体である。すなわち、本合成中間体から、位置および立体選択的な官能基変換を行うことで、プベルリンCの全合成が可能である。本年度達成した研究成果は、プベルリンCを含む6環性アルカロイドの統一的全合成に向けて重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、プベルリンCの全合成に向けて、本天然物が有する特異な6環性骨格構築法の確立を目標としていた。これを達成するために、まず、鍵反応となる連続ラジカル環化反応基質の設計を変更し、効率的な鍵反応基質の合成法を確立した。すなわち、より熱安定性の高いラジカル供与体を用いることで、鍵反応基質の量的供給法を確立した。続いて、連続ラジカル環化反応の反応条件を最適化した。本環化反応は、1工程にて2つの環構造および2つの第4級炭素を含む連続する5つの立体化学を制御可能であるため、プベルリンCの骨格構築に極めて効率的な手法である。ラジカル開始剤の構造、溶媒、反応時間が反応の完結および収率に重要な役割を果たすことを見出し、再現性の高い環化条件を確立できた。最後に得られた5環性化合物に対して向山アルドール型の環化反応を実現し、プベルリンCが有する特異な6環性骨格構築を完了した。本6環性化合物は、プベルリンCが有する酸素官能基導入の足掛かりとなる官能基を備えているため、極めて重要な合成中間体である。以上の成果から、本年度は当初の目標を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
プベルリンCの全合成に向けて、鍵反応として設定した連続ラジカル環化反応および向山アルドール型の環化反応のさらなる最適化を行う。第一に、連続ラジカル環化反応においては、連続ラジカル環化基質から発生させたラジカル中心の立体障害を低減することで、収率が向上すると予想した。この仮説に基づき、基質の構造を適切に改変する。また、ラジカル還元剤、溶媒、反応時間および反応温度の検討も行うことで、本ラジカル反応を効率化する。第二に、向山アルドール型の環化反応に関して、昨年度に実現した環化条件をさらに最適化することで収率の向上を目指す。すなわち、アセタール構造の活性化に必要なルイス酸を種々検討する。続いて、シリルエノールエーテル構造が本反応の収率に与える影響を精査する。最後に、溶媒、反応温度を検討する。これらの条件最適化を行った後、プベルリンCの全合成を達成する。得られた6環性化合物に対して、位置および立体選択的な官能基変換を行う。保護基の除去、酸化度および立体化学の調節を適切な順序で行うことで、プベルリンCの全合成を完遂する。また、プベルリンCの合成中間体から骨格変換を実現することで、リコクトニンの全合成を行う。これにより、連続ラジカル環化反応および向山アルドール型の環化反応を鍵とする本合成手法が、6環性アルカロイドの統一的全合成に対して強力な手法であることを実証する。
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