2020 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体と有機触媒間の二次的相互作用を鍵とする触媒的不斉C-H官能基化法の開拓
Project/Area Number |
19J21252
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗原 拓丸 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 不斉反応 / 有機触媒 / C-H官能基化 / 第9族遷移金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では第9族遷移金属と有機触媒を組み合わせた不斉C-H官能基化法の開発を目指している。ラセミ反応であるCp*Co触媒を用いたピリミジルインドールのC-H結合切断を経るマレイミドへの1,4付加反応[Ackermann, L.; Li, J. et al. Org. Lett. 2017, 19, 3315.]においてウレア, チオウレアを添加し反応性、選択性への影響を調査した。アキラルなウレア触媒を用いた場合、収率、選択性への影響はほとんどなく反応に関与していないことが示唆された。一方でチオウレア触媒を用いると反応はほとんど進行しなかった。チオウレアがコバルトに配位し失活したことが原因であると考えられる。今後の検討はウレア触媒、またはスクアラミド触媒を用いることとした。Cp*Rh触媒を用いたニトロアルケンへの1,4反応[Ellman, J. A. et al. ACS Catal. 2017, 7, 145.]をモデル反応としてCp*金属や有機触媒、基質の検討を行なった。キラルウレア、スクアラミド触媒は比較的安価なシンコニジンから合成している。Cp*Rh触媒存在下、ピラゾールを配向基として用いた場合、室温では反応は進行せず50度まで反応温度を上昇すると目的物が得られ、わずかながら不斉が誘起された。トリアゾールを用いた場合も同様に低い選択性ながらも目的物が得られた。本反応はCp*M(III)金属とキラルウレア触媒を組み合わせた初の不斉反応の例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1.触媒の合成、2.それを用いた不斉反応の開発を目的としている。まず触媒合成に関しては当初計画していたカルボン酸触媒では低い選択性にとどまったことから、カルボン酸と同様に水素結合を基質や触媒と形成しうるキラルウレア・チオウレア触媒を利用している。これらの触媒は安価な原料であるイソシアネート・チオイソシアネートとシンコニジン由来のキラルアミンやキラルアミノアルコールから容易に合成可能であり多様な触媒ライブラリーの構築に成功している。合成した触媒を第9族遷移金属触媒によるC-H官能基化反応に用いることでわずかながら選択性の発現を確認した。本結果より方向性の転換は生じたものの申請者の研究状況はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Cp*Rh触媒を用いたニトロアルケンへの1,4反応においてキラルウレア触媒を用いることで選択性がわずかながら発現した。選択性が低い原因として1.触媒の不斉制御能が低い、2.バックグラウンドでのラセミ反応が進行していることが挙げられる。そこでまずキラルウレア触媒の合成が容易である点を活用し、多種多様な触媒を調製し、本反応に適した触媒構造を探索する。また求電子剤をより反応性の低い基質に変更することでバックグラウンドでのラセミ反応を抑制し、触媒により活性化された基質のみを反応させ選択性の向上を目指す。
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