2019 Fiscal Year Annual Research Report
中性子線回折や透過電子顕微鏡を用いたBCC鉄の水素脆性破壊のミクロ機構の解明
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19J21267
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 和歩 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 水素脆性 / 透過電子顕微鏡 / 転位形態 / 中性子回折実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素によって変形微視組織がどのように変化するのかは未だ明らかになっていなかった.また,ラスマルテンサイト組織のような複雑な組織は転位形態などを詳細に解析するには向かない.そこで申請者は,水素が塑性変形挙動に及ぼす影響を明らかにするため,水素添加されたフェライト鋼の引張変形微視組織を詳細に解析した. 未チャージ材と比較して,水素チャージ材の延性は大きく低下していた.中性子回折実験や変形微視組織の観察結果から,転位密度は水素チャージ材のほうが高く,水素によって転位運動が活発になったことがわかった.また,未チャージ材の場合,変形初期に存在する転位はほとんどがらせん転位であるが,ひずみ量の増加とともに刃状転位の割合が増加していた.一方で,水素チャージ材の場合,ひずみ量にかかわらず刃状転位とらせん転位の割合はほぼ同等であった.また,特にき裂発生直前のひずみ量において,水素チャージ材の方がらせん転位密度が高かった.これらの傾向は STEM 解析によっても確認された.さらに,未チャージ材では比較的直線的な転位が観察される一方で,水素チャージ材中の転位は直線的でなく,未チャージ材よりも絡まり合った形態が観察された.水素の存在によるこうした変形微視組織の変化は,水素によってらせん転位の移動速度が上昇した結果,転位の切り合いが頻繁に生じたことによると考えられる.また,STEM解析によって水素チャージ材の主すべり面が (011) 面であることも確認している.さらに,水素チャージ材のき裂先端において,{011} 面に沿ってマイクロボイドが連結している様子も観察された.以上の結果から,申請者は,{011} 面に沿った水素脆性擬へき開破壊は,らせん転位のジョグ引きずり運動によってすべり面である {011} 面上に多量に導入された空孔・ナノボイドの連結によって生じるのではないかと考えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通りに進んでいるから.
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Strategy for Future Research Activity |
破面の3次元像構築とFIB,TEMを組み合わせる新しい手法によって,フェライト鋼の水素脆性擬へき開破壊についてserrated markingsの結晶学的特徴や破壊挙動との相関を明らかにする.
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