2020 Fiscal Year Annual Research Report
ジカウイルスアジア型株間の比較に基づくジカウイルスの病態発現機序の解明
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19J21312
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稲垣 拓哉 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ジカウイルス / リバースジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、培養細胞における増殖能力、マウスに対する病原性の異なるジカウイルス株を用いて、両株の性状の違いを決めるウイルス側因子を同定することである。そこから、ウイルスの感染や病原性の機序の解明を目指す。昨年度までに、ジカウイルスのPRVABC59株およびNIID123株の遺伝子組換え系の開発を行った。本年度はこの系を用いて、両株の性状の違いを決めるウイルスのアミノ酸の違いを探索した。 はじめに、PRVABC59株とNIID123株間でゲノム配列を交換したキメラウイルスを作製した。キメラウイルスの培養細胞における増殖性を解析し、両株の性状の違いを決めるウイルス遺伝子およびアミノ酸の絞り込みを行った。その結果、1つのアミノ酸の違いが、両株の培養細胞における増殖性の違いに影響することを発見した。野生株ではPRVABC59株のほうがNIID123株よりも増殖性が高い。このアミノ酸を両株間で交換すると、PRVABC59株は増殖性が低下し、NIID123株は増殖性が増加した。 次に、この点変異ウイルスをマウスに接種し、病原性が変化するかを解析した。病原性の指標として、接種後の血中ウイルス量ならびに接種後の精巣の萎縮を指標とした。この系では、PRVABC59株の接種群のほうが血中ウイルス量が多く、より多くの精巣が萎縮する。点変異PRVABC59株は野生株に比べて、感染マウスの血中ウイルス量が減少し、萎縮した精巣の数も減少した。反対に、点変異NIID123株は、接種後の血中ウイルス量が野生株のそれと比べて増加していた。ところが、萎縮した精巣の数に関しては、点変異株と野生株の接種群で違いがなく、その数は点変異PRVABC59株接種群と比べても少なかった。強い増殖性は、ジカウイルスのマウスの精巣への病原性に関して必要な条件ではあるが、十分な条件ではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度にジカウイルスの遺伝子組み換え系の開発を行ったが、想定以上に困難で、時間がかかった。そうした影響に加え、大学や研究室がロックダウンされ、実験ができない状況もあった。ジカウイルスのPRVABC59株とNIID123株の性状の違いを決めるアミノ酸の同定はなされたものの、そのメカニズムの解析までは踏み込めていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本課題の最終年度となる。同定したアミノ酸の違いに関連して、ウイルスの感染機構の解析を進める予定である。これまでの成果をまとめて、学会発表および論文発表を行う。
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