2019 Fiscal Year Annual Research Report
脈として産する高圧鉱物の複数相飽和実験による沈み込み流体組成と移動の解明
Project/Area Number |
19J21319
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 菜緒子 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 沈み込み帯 / プレート境界岩 / 高圧鉱物脈 / 流体 / 外熱式ダイヤモンドアンビルセル / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は天然のプレート境界岩石中の脈に産する流体から直接晶出した高圧鉱物が水に溶解・飽和する条件に着目し, 実験的研究によって沈み込みスラブから脱水した流体の化学組成と移動について新たな情報の獲得に取り組むものである. 研究初年度である2019年度では, 1.カリフォルニア州で野外調査を行い, 後退変成作用を受けたエクロジャイト中からルチルを伴う脈とその母岩を採取した. また, 2.東北大学において外熱式ダイヤモンドアンビルセル型高温高圧発生装置の立ち上げと実験手法の確立に取り組んだ. 実験中温度上昇に伴う減圧やコンタミネーションが生じる失敗を経験したが, 装置の微調整やサンプリングなどの技術習得により実験の成功率を上げた. これらの取り組みにより高圧下で約800度まで安定的に実験を行うことができるようになり, 鉱物-水系や鉱物-Na2CO3溶液系において沈み込み帯を再現した温度圧力条件での鉱物の溶解や結晶化のその場観察および溶液のラマンスペクトル測定に成功した. また予察的実験ではあるが, 高温下でNa2CO3溶液に対してルチルが溶解し, その後冷却により溶液からルチルが再晶出する様子を観察した. これは水流体中のルチル溶解度に対する炭素を伴う陰イオンの高い効果を示唆する結果であり, 鉱物の溶解度を上昇させる要因として主に考えられてきた塩化物イオンやフッ化物イオンなどに加えて炭素を伴う陰イオンの重要性を示す.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微小サイズの出発物質の作成や冷却システムの設計などを含めた装置の立ち上げは当初の計画通り順調に進んだ一方で, 実験中に加熱用ワイヤーが切れるなどの予期せぬトラブルも経験し, ヒーターの納期もあって復帰に1ヶ月半要した. その他実験中の減圧などの失敗はあったものの, 高温高圧下における鉱物の溶解や結晶化のその場観察および溶液のラマンスペクトル測定に成功し, 予察的結果を得たため進展があったと言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず初年度で課題となった希薄な溶液の弱いラマンバンドの取得するために, 最適なレーザーの種類や強度などの条件を模索する. 初年度にプレート沈み込み帯を再現した温度圧力条件における実験ルーチンを確立したため, 今後天然に産する脈中の鉱物組み合わせに基づいた出発物質を用いた様々な温度圧力条件での実験や溶解度の定量化を行う.
|
Research Products
(2 results)