2020 Fiscal Year Annual Research Report
広域集団ゲノム解析によるアオサンゴの異時的な種分化起源と分子機構の解明
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19J21342
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
谷中 絢貴 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | アオサンゴ / 種分化 / インド太平洋系統地理解析 / 生殖時期の異時性 / MIG-seq / 生物時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
インド太平洋広域のアオサンゴを対象としたMIG-seq解析、そして生物時計遺伝子群を用いた系統地理解析を目的に、前年度までに収集した国内外のアオサンゴ配列データを合計1000サンプル以上統合し、集団遺伝学的解析及び系統学的解析を実施した。その結果、インド西太平洋海域のアオサンゴ属は、現在記載されている2種(Heliopora coeruleaとHeliopora hiberniana)をそれぞれ含む2系統と、それらとは大きく系統の異なる新たな第3の未記載系統グループ(Heliopora sp.)の大きく3系統グループから構成することを初めて解明した。各系統グループ内にはさらに地理的距離や成長形態の違いに応じるような複数のサブクレードが存在し、インド西太平洋各地で隠蔽的に多様化していた。この研究成果はオンライン開催された日本サンゴ礁学会第23回大会で口頭発表を行い、最優秀口頭発表賞を受賞した。 続いて、生物時計遺伝子に関連するアオサンゴ種分化の分子機構解明を目的に、前年度に実施した予備実験 をもとに、今年度当初計画していた沖縄県での2つの飼育実験(春から夏にかけて予定していた月齢飼育実験、秋に予定していた明暗飼育実験)については、国内のコロナ情勢に伴い研究協力機関の判断を十分に考慮した結果、計画に関わる全てのフィールド調査・実験を中止した。これにより当初予定していた前年度の予備実験サンプルと合わせた網羅的な発現遺伝解析を実施できず、本研究の目的達成の鍵となるアオサンゴの生物時計遺伝子群の同定にまで至らなかった。 本年度の研究活動中の研究成果公表については、共著者として著書1報を始め、オンライン開催された国際学会では第二著者として口頭発表、国内学会においては第一著者として口頭発表と第二著者としてポスター発表をそれぞれ行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アオサンゴのMIG-seq 法を用いた集団電解析および系統地理学的解析について着実に業績を上げることができた。ドライ解析のパイプラインを構築し、インド太平洋における生きる化石アオサンゴの隠蔽系統の分布とその系統的な関係を明らかにし、造礁サンゴの種分化パターンを解明した。この研究結果についても、筆頭著者として学術論文に執筆し投稿目前にまで進められている。さらに、日本サンゴ礁学会オンライン大会では、本研究内容を発表して最優秀口頭発表賞を受賞し、前年度に引き続き発表技術に磨きをかけて外部からも研究を高く評価された。現在は、八放サンゴでは初となる生物時計関連遺伝子の同定とその挙動を明らかにするべく、本年度は計画通りの実験が行えなかったものの、昨年度行った予備実験データをトランスクリプトーム解析するため準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
インド太平洋におけるアオサンゴの種分化パターン解明を目的としたMIG-seq解析はすでに前年度中に一通りの解析と論文執筆も終えており、次年度中に査読付き国際誌への投稿・受理を目指している。また前年度の解析過程で発見したアオサンゴ第3の未記載系統グループの種記載を検討するための詳細な遺伝学的・形態学的データの収集や、日本国内に存在する特異的な遺伝系統集団の詳細な遺伝学的・生理生態学的特徴も解明し、これらについても次年度中に随時論文化を目指す予定である。 生物時計遺伝子群に関連するアオサンゴ種分化の分子機構解明を目的とした飼育実験については、今年度コロナ感染拡大により全中止となった2つの飼育実験(月齢周期飼育実験と明暗制御飼育実験)の内、他の研究日程の都合上、明暗制御飼育実験のみ次年度に行う予定である。内容は当初計画していた通り、八放サンゴ初となる恒常的な日周リズムの有無とそれに関係する概日時計遺伝子群の同定及び挙動の解明を目的に、生殖時期ではない9月(秋分の日あたり)に沖縄本島周辺海域(奥武島および読谷村)にて野外サンプリングした後、初年度と同様、栗原晴子博士(琉球大)の協力の下、明暗制御飼育下での各種定期サンプリング(DNA/RNA/生殖腺組織)を行う。現在は、前年度の予備実験サンプルや今年度に遠隔で実施した沖縄本島周辺のアオサンゴの生殖時期推定に関係して収集したRNAサンプルを用いて、アオサンゴから発現遺伝解析等へ利用可能な高品質かつ十分量なRNAが得られる最適なRNA抽出・シークエンス方法、解析フローの検討を行っており、次年度に十分なRNAサンプルが入手できた際にすぐにデータが得られる状態を調整中である。RNAサンプルを用いたRNAシークエンス及び発現遺伝解析については、宮崎大学医学部の菊地泰生准教授 、中央水産研究所の本郷悠貴博士のそれぞれ協力の下実施する。
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Research Products
(5 results)