2020 Fiscal Year Annual Research Report
ラミニン分子がヒト小腸オルガノイドの増殖と安定性に与える影響の解析とその創薬応用
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19J21382
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 智起 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 薬物動態学 / 初回通過効果 / ヒト腸管オルガノイド / 単層膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト腸管オルガノイドの樹立・継代維持培養の技術の整備が進み、安定的に培養が行える基盤が整った。昨年樹立済みのヒト腸管オルガノイドに加え、数例のヒト腸管オルガノイドを新たに樹立したことは本年度における大きな成果であるとともに、このオルガノイドは医薬品の吸収・代謝・排泄に大きく寄与する空腸由来のものであるため今後の検討の礎となることが期待される。創薬応用に向けた検討については活発に進行することが出来ており、関連する内容を国内学会で3度発表、2報の論文を投稿するに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
札幌医科大学医学部消化器・免疫・リウマチ内科学講座の仲瀬裕志教授より、空腸2例についてヒト腸管生検組織の供与を受け、ヒト腸管オルガノイドの樹立を試み、いずれの樹立にも成功した。空腸は医薬品・食品の吸収・代謝・排泄に大きく寄与するとともに、最も内視鏡検査が稀な消化管部位である。このことから、本年度樹立に成功したヒト腸管オルガノイドは貴重な研究リソースとなることが予想され、各種の研究基盤が整ったと言える。樹立が成功したヒト腸管オルガノイドについては、継代培養を重ねつつストックの作製を行い、各種実験基盤の整備を行った。以上より、(昨年度樹立に成功した株を含めた)複数の株について均質で大規模な実験を行うことが可能であると考えられる。 創薬研究への応用を見据え、継代維持培養中には三次元構造をとっているヒト腸管オルガノイドの単層膜化を試みた。各種の検討の結果、本単層膜培養系は生体に近い酵素活性・遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかとなり、開発医薬品の体内動態をin vitroにおいて予測する上で非常に有用であることが示唆された。今後は本培養系のより詳細な検討とともに他の分野への応用の可能性を探っていく。また、本検討を進める上で、ヒト腸管オルガノイドの培養条件を変更した際に単層化時の基質親和性が変化する現象を観測している。この現象はヒト腸管オルガノイドを培養する際の細胞外基質の重要性を示唆するものであり、今後より詳細に検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
各種の培養法を用いてヒト小腸オルガノイドを培養する。それを回収・破砕しトランズウェル上に播種することにより単層膜を作製する。作製した単層膜について、経上皮電気抵抗(TEER)を測定することでそのバリア機能を評価する。次に小腸上皮細胞の主要な機能の一つであるCYP3A4活性を活性測定キットにより測定する。また、リファンピシンおよびフェノバルビタールの添加によるCYP3A4の誘導能を定量的RT-PCR法で評価する。さらに、Rhodamine123を用いた薬剤の吸収・排泄の評価をはじめとする薬物動態試験を各種行い、現状汎用されている培養系と比較することにより、創薬研究への応用可能性を検討する。本研究で作製した各オルガノイド・単層膜については、比較的大規模なシングルセル解析を行い、他の検討で得ることのできないpopulationに関する情報を取得し、これまでの結果と総合して考察を行う。
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Research Products
(4 results)