2020 Fiscal Year Annual Research Report
TNIK阻害による骨肉腫新規治療薬の探索,分化転換誘導の機序解明
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19J21415
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関田 哲也 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 滑膜肉腫 / TNIK / Wntシグナル / MYC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Wntシグナルを最下流で制御しているTNIKを標的とした阻害剤NCB-0846を用いて、骨および筋肉や脂肪などに生じる肉腫における新規治療薬の探索を行うことを目的としている。Wntシグナルは身体の正常を維持するために重要な役割を果たしているが、このシグナルが異常に働くと色々な癌に繋がることが明らかになっている。いくつかの肉腫もWntシグナルとの関連が指摘されている。TNIKはこのシグナルを最もDNAに近い部分で制御しているため効果が期待できる。多くの肉腫は抗がん剤の選択肢が少なく、転移してしまった症例に対して有効な治療方法がないこともある。新しい治療薬を治療に難渋している肉腫患者へ届けることは非常に重要であり、本研究の最終的な目標である。今年度の主な研究成果を以下に記載する。 ①昨年度の遺伝子解析で、NCB-0846によって代謝経路が非常に強く活性化することが明らかとなった。今年度はメタボローム解析という手法を用いて具体的にどのような代謝が活性化したかを評価した。 ②マウスに骨肉腫の細胞を移植して、口から薬剤を投与した。その後、マウスの身体を使って解析を行い、骨肉腫細胞が薬剤投与によって正常な脂肪に置き換わっていくことを確認した。 ③昨年度の研究で、薬剤の新たなターゲットとして、滑膜肉腫に注目した。今年度は滑膜肉腫に対する効果を具体的に評価した。その結果、滑膜肉腫では腫瘍が脂肪に置き換わることはなく、速やかに細胞が死滅することが分かった。薬剤の効果は極めて強く、骨肉腫以上であった。遺伝子解析を行い、MYCという発癌に関係する遺伝子の発現抑制が特に強いことが分かった。 本年度の成果によって、薬剤が骨肉腫/滑膜肉腫に有効で、特にMYCを強く抑制するという新たな薬剤の可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響もあり、当初行っていた新化合物の絞り込みは行えていないが、それ以外の点では順調に計画していた実験が進めている。さらに滑膜肉腫に対して化合物が有効であることや、MYCを強く抑制することなど、新たな知見を得ている。 今後さらなる進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、薬剤の作用機序をより明確にすることを目標とする。 具体的にはMYCが過剰発現している骨肉腫細胞に薬剤を投与し、他の骨肉腫細胞と同じ結果が得られるか検証する。この研究を計画する上で①骨肉腫細胞株は種類が限られており、MYC発現量に大きな差は認められない、②遺伝子操作でMYCを過剰発現させるとそれだけで細胞が死んでしまうという問題点があったが、所属大学の他施設で作製したMYCを過剰発現することによって作られた骨肉腫細胞を使用することでこれらの問題点の解決が期待される。 また、滑膜肉腫と骨肉腫に対する薬剤の効用が異なっていたことに注目し、Wntシグナル以外にどのような経路に影響を及ぼしているのかを両者を比較する事で検証する。
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