2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J21437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西井 啓太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙推進機 / 水 / レジストジェットスラスタ / ハイブリッドロケット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,最終目標である水統合推進機の実現に向けて,大きく分けて2つの研究を行った. 第一は水の超音速ノズル流れにおける精密な推力測定である.ガス推進機では,ノズル性能の評価が必須である.特に小型衛星においては流れのレイノルズ数が小さくなることから,理想的な流れの式を当てはめることが困難であり,実測に基づいた検証,物理現象の把握が必要となる.実験において,これまで狭い領域でしか得られていなかった,背景圧力とノズル性能の依存性を定量的に測定した.また,ノズル入り口圧力と背景圧力の比で性能低下割合を整理できること,その低下割合の下限がノズルスロートレイノルズ数で決まることを示した.また,他のガスとの比較により,水ノズル特有の流量係数変化や温度による効率変化を明らかにした. 第二の研究として,水と金属の燃焼挙動を測定した.小型衛星における容積や電力の限界を超えるために安全に利用できる化学エネルギーを用いた新しい推進機の基礎研究である.アルミニウム・マグネシウムの単線に電流を流すことで加熱し,酸素または水蒸気雰囲気中での様子を観測した.観測には高速度カメラ・分光器・圧力計が用いられた.空気の混入を防ぐため,燃焼室は真空層内に配置され,電磁バルブ等を用いて実験環境を調整した.アルミニウムとマグネシウムでは,その酸化物の特性から燃焼のしやすさが大きく異なることがわかった.分校による測定から,それぞれの酸素環境における着火温度は,先行研究と概ね一致した.本研究の新しい部分である水蒸気との着火・燃焼温度も測定され,今後の推進機への応用の足がかりを得た.加えて,これまでは定量的には用いられていなかった熱着火理論による燃焼現象の評価を行うことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究予定通り,水と金属の燃焼反応の測定を行うことができた.この測定により,今後の推進機を設計するにあたって必要な着火条件並びに,水との燃焼で生じる特有の現象を観測することができた.他に必要な燃焼速度などの一部のパラメータに関しては継続して実験を行い,取得する. 化学推進機の研究に加え,当初の予定ではなかった水ノズル,並びに背圧とノズル性能の関連性に関する研究を行った.この研究は最終的に実現される推進機の適切な評価に大きく関わるものである. 以上から,計画は概ね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の方策として,第一に,より実機に近い数cm級の塊状金属を燃料として実験を行う.現在までの研究に追加して赤外線カメラによる撮像を行うことで,更に正確な着火条件を得る.また,燃焼速度を高速度カメラの画像解析により得る. 第二に,得られた諸量を使い,小型衛星に搭載可能なスケールの推進機を設計する.設計した推進機を実際に構築し,推進パラメータを実測することで,超小型ハイブリッドモーターの実証を行う. 次年度には,最終目標である多機能推進機を,これまでに研究してきたレジストジェット,ハイブリッドモーターを組み合わせることで実現する.
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Research Products
(5 results)