2019 Fiscal Year Annual Research Report
キラルアミノ酸の三次元HPLC一斉分析法開発と腎・心不全の新規診断マーカー探索
Project/Area Number |
19J21452
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古庄 仰 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | アミノ酸 / キラル分離 / 多次元HPLC |
Outline of Annual Research Achievements |
腎疾患患者の血中では数種のD-アミノ酸含量が疾患の進行と関連することが報告されており、バイオマーカー候補として有用性が注目されている。しかし、多種多様な夾雑成分を含む生体試料中で微量にしか存在しないD-アミノ酸を分析することは困難であり、従来の分析法では感度や選択性の問題で定量不能となるD体が数多く存在した。そこで本研究では、高感度選択的三次元高速液体クロマトグラフ法(HPLC)を開発し、腎不全及び心不全を対象としたキラルアミノ酸含量変動の全体像解明、新規診断マーカー探索を行うことを目的とした。2019年度はタンパク質構成遊離アミノ酸一斉分析法構築の第一段階として、腎疾患患者の血中で顕著な含量変化が報告されている4種のアミノ酸(アラニン、アスパラギン、セリン、プロリン)を対象とする腎疾患特化型三次元キラルHPLCを開発した。逆相分離と光学分割を組み合わせた従来の二次元HPLCに新たな分離次元として陰イオン交換分離を追加し、各次元における移動相、カラムサイズ等の分離条件を精査した。構築した分析法を健常人の血液試料に適用した結果、従来法で多数認められた夾雑成分のピークが顕著に減少し、微量D-アミノ酸の精密な定量が可能であった。このことから新規に開発した三次元HPLCが従来法よりも高い選択性を有しており、ヒト臨床試料分析に有用であることが示された。また、今後分析対象アミノ酸を拡大する上で、陰イオン交換カラムは酸性アミノ酸の保持が極めて強く、塩基性アミノ酸の保持が極めて弱いため、これらのアミノ酸は分析が困難であった。そこで、複数の保持機構を有するオリジナルミックスモードカラムを開発した。新規カラムは酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸及び塩基性アミノ酸であるヒスチジン、アルギニンを適切に保持し、共存成分との分離が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
タンパク質構成遊離アミノ酸を対象とする三次元キラルHPLC一斉分析法開発の第一段階として、2019年度は4種のアミノ酸(Ala、Asn、Ser、Pro)を対象とする腎疾患特化型三次元キラルHPLCを開発した。これらアミノ酸4種のD体は腎不全の進行に伴って顕著な含量変化を示すことが報告されており、診断マーカーとしての利用が強く期待されている。逆相分離と光学分割を組み合わせる従来の二次元HPLCに、予備検討で有用性が認められた陰イオン交換分離を追加し、各次元における移動相、カラムサイズ等の分離条件を検討した。その結果、対象アミノ酸を他のアミノ酸から分離し、三次元目の光学分割で鏡像異性体を良好に分離することが可能であった。 構築した分析法を用いて健常人の血液試料を分析した。比較のために二次元HPLCを用いて同一の試料を分析した結果、二次元目光学分割においても多数の夾雑ピークが認められ、微量D-アミノ酸の正確な定量は困難であった。一方で三次元HPLCでは、二次元目陰イオン交換分離により対象アミノ酸が夾雑成分から良好に分離され、三次元目光学分割ではD体のピークが明瞭に認められた。以上の結果から、新規に開発した三次元キラルHPLCが従来法よりも高い選択性を有しており、ヒト臨床試料に適用可能であることが示された。 また分析対象アミノ酸を今後拡大する上で、今回使用した陰イオン交換カラムは塩基性アミノ酸の保持が極めて弱く、酸性アミノ酸の保持が極めて強いため、これらのアミノ酸は分析が困難である。そこで疎水性相互作用やπ-π相互作用、水素結合等の複数の保持機構を有するミックスモードカラムを新規にデザインした。開発したカラムは酸性アミノ酸であるAsp、Glu及び塩基性アミノ酸であるHis、Argを適切に保持し、共存成分との分離が可能であった。 以上から本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目においてAla、Asn、Ser、Proのアミノ酸4種を対象とする腎疾患特化型三次元キラルHPLCを開発し、健常人の血液試料を分析した。その結果、従来の二次元HPLCと比較して高い選択性を有しており、分析対象アミノ酸4種を正確に定量可能であった。そこで本分析法を用いて腎疾患患者の臨床検体を分析し、分析装置の実用性、適用性を評価すると共に課題の抽出と装置の改良を行う。腎疾患臨床検体は九州大学大学院医学研究院及び国立医薬基盤研究所との共同研究により収集する。原因疾患が既知の検体を用いたキラルアミノ酸プロファイリングに加えて、既存の診断マーカーとの相関を解析することで分析対象とする4種のアミノ酸、8種の鏡像異性体について診断マーカーとしての評価を行う。 また、1年目に開発した腎疾患特化型三次元キラルHPLCを基盤として、タンパク質構成遊離アミノ酸を中心に分析対象アミノ酸を拡大し、網羅的キラルアミノ酸分析法を開発する。分析対象アミノ酸を拡大するために、分離条件および使用するカラムを精査する。タンパク質構成遊離アミノ酸には酸性アミノ酸であるAsp、Gluや塩基性アミノ酸であるHig、Arg等が含まれる。腎疾患特化型三次元キラルHPLCで使用した陰イオン交換カラムで分析が困難なこれらのアミノ酸は、1年目に開発したオリジナルミックスモードカラムを用いて分析法を構築する。
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Research Products
(14 results)