2019 Fiscal Year Annual Research Report
Spectroscopic study of phenomena arising from magnetoelectric coupling in multiferroics
Project/Area Number |
19J21456
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻野 槙子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 光物性 / マルチフェロイクス / らせん磁性 / テラヘルツ分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.非カイラルならせん磁性体における自然旋光性の観測:自然旋光性とはカイラルな物質の示す基本応答として知られている現象である。一方、非カイラルな物質でも対称性から自然旋光性が許される。しかしながら、その観測の困難さから観測例に乏しい。本研究ではサイクロイド型磁性体では結晶構造でなく、スピン構造が空間反転対称性を破ることで、非カイラルかつ自然旋光性が許容な対称性を満たすことに着目し、代表的なサイクロイド型磁性体であるペロブスカイト型マンガン酸化物において観測を行った。サイクロイド型磁性体固有の素励起であるエレクトロマグノン共鳴に対応するエネルギーにおいて100 mrad./mmを超える非常に大きな偏光回転が観測された。また、磁性誘起電気分極の符号に対応した偏光回転の符号変化がみられた。 2.固体におけるラマン散乱円二色性の観測:カイラルな物質に直線偏光を入射すると自然旋光性により偏光面が回転する。これはカイラルな物質では左右円偏光に対して屈折率が異なるためである。このような現象は透過過程のみならずラマン散乱過程においても存在する。それがラマン散乱円二色性であり、非相反光学効果の一種である。ラマン散乱円二色性は分子液体において多数の観測例がある一方、固体における観測例は水晶において高強度のナノ秒パルスを照射した場合に生じる誘導ラマン散乱過程を利用したもののみであり、スペクトルなども得られていない。そこで、磁性体を含む固体におけるラマン散乱円二色性の観測に取り組んだ。水晶において自発ラマン散乱過程における円二色性が観測されて、モード選択性が先行研究とコンシステントとなった。さらにその大きさは分子液体のものに比べて10倍以上である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 非カイラルならせん磁性体における自然旋光性の観測:本成果に関してはおおよそのデータセットが得られ、議論がほぼ確立している。本研究の原理を利用して、テラヘルツ光による面直磁化の超高速制御、電場のみによる方向2色性という2つの研究テーマを考え、実験を試みたが、現時点では所望の現象は観測されていない。 2. 固体におけるラマン散乱円二色性の観測:本成果に関しては、水晶における効果は成果が得られている。一方、磁性体におけるラマン散乱円二色性の増強を期待しているが、現状では磁性体において特段大きな効果を得られていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 非カイラルならせん磁性体における自然旋光性の観測:本研究の原理を利用して考案した研究テーマ、テラヘルツ光による面直磁化の超高速制御、電場のみによる方向2色性の研究を続行する。 2. 固体におけるラマン散乱円二色性の観測:観測されている水晶の効果に関しては、フォノンモードなどを考慮し、メカニズムを考察する。また、ラマン散乱円二色性が微視的には電気双極子と磁気双極子の結合項により表せることから、カイラル結晶をもつ磁性体や、スピンがカイラルな対称性をもつ磁性体において観測を試みる。本効果のほかにいくつかの非相反性をもつ散乱現象が期待されている。磁場下での観測が必要となるため、強磁場下で測定可能なラマン散乱光学系を構築し、測定を行う。
|