2020 Fiscal Year Annual Research Report
リプログラミングによるステムセルメモリーT細胞の誘導機構と抗腫瘍免疫応答
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19J21508
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 眞 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫記憶 / 細胞移入療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん抗原特異的キメラ抗原受容体発現T細胞 (CAR-T) 療法は極めて有用ながん治療法であるが、活性化された CAR-T 細胞は持続的な刺激を受けて疲弊 (Exhaustion) するため、免疫記憶を確立することが難しい。ステムセルメモリーT細胞 (TSCM) はメモリーT細胞による免疫記憶の根幹を担っていることが知られており、CAR-T療法に最適なメモリーT細胞サブセットであると考えられている。当研究室では活性化したヒト CD8+ CAR-T 細胞を、Notch リガンドを発現するフィーダー細胞と共培養することで TSCM 様 CAR-T 細胞 (CAR-iTSCM) を誘導する方法を確立している。CAR-iTSCM は従来の CAR-T に比べて強力な抗腫瘍効果を示すが、誘導時に異種由来成分の混入リスクを伴うことから臨床応用には適していない。そこで、我々は iTSCM のフィーダーフリー誘導法の確立を試みた。 T細胞を Notch リガンドをコートしたプレート上かつフィーダ細胞の培養上清中で培養すると iTSCM を誘導することができた。また、フィーダ細胞培養上清中に含まれるiTSCM誘導に重要な因子として CXCL12 が見出された。さらにIGF-I と CXCL12、Notch リガンドを組み合わせた条件下でT細胞を培養することで、フィーダ細胞によって誘導される iTSCM の表現系を再現できた。上記のフィーダーフリーで誘導された CAR-iTSCM は、従来の CAR-T に比べて、強力な抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画であった iTSCM 誘導のフィーダーフリー誘導法を確立することができた。また当初は採用年度3年目に計画していたフィーダーフリー誘導法を用いた CAR-T のiTSCM化および、がん治療モデルマウスを用いた抗腫瘍効果の検討や遺伝的、代謝的側面からのフィーダーフリー CAR-iTSCM の性質の評価にもすでに着手しており、良い結果が得られつつある。以上のことより、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
採用年度1年目の研究より、iTSCM の誘導機構を代謝状態や分子機構の観点から明らかとした。採用年度2年目の研究では、前年度の研究成果を基に iTSCM のフィーダー・フリー誘導法を確立し CAR-T に応用することで、フィーダーフリー誘導 CAR-iTSCM のがん治療における有用性を示すことができた。 今年度はフィーダーフリー誘導 CAR-iTSCM のがん治療への応用を目指した実験計画を予定している。具体的にはフィーダーフリー誘導 CAR-iTSCM の in vitro と in vivo での抗腫瘍効果をさらに詳細に調べる予定である。さらに遺伝的、代謝的観点からフィーダーフリー CAR-iTSCM のステムセルメモリーT細胞としての性質も明らかにする。また、本年度は本研究の最終年度であるため得られた研究成果を論文や学会で積極的に発表していく予定である。
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