2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J21518
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
川戸 智 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | WSSV / クルマエビ / EVE / 内在性ウイルス様配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. クルマエビ類への外来遺伝子導入方法の検討 クルマエビ類成体への外来遺伝子導入技術の確立を目指し、エレクトロポレーション法を用いて、バナメイエビ筋肉組織にGFP遺伝子の導入を試みた。プロモーターには、クルマエビ類受精卵への遺伝子導入実験で有効性が確認されているCMVプロモーターを用いた。導入1週間後、一部個体の筋肉組織に緑色蛍光が確認されたものの、これは組織が損傷を受けた際生じる自家蛍光であることが判明した。引き続き、実験条件の改善や異なる手法を導入することにより、クルマエビ類成体への高効率な遺伝子導入法の確立を目指す。 2. 甲殻類ゲノム中に残された内在性ウイルス配列の探索 ニマウイルス科の分子進化や宿主域をより詳細に明らかにすべく、次世代シーケンサーを用いて甲殻類ゲノム中のEVEsを探索している。これまでに、WSSVに極めて近縁なウイルス二種のゲノム、およびニマウイルス科に属するかその姉妹群と見られるニマウイルス様配列を発見した。現在、これらの新たに発見されたEVEsの比較解析を行っている。 3.日本産WSSVゲノムの比較解析 ホワイトスポットシンドロームウイルス (WSSV) は、世界のクルマエビ類養殖における最も深刻なウイルス病原体である。次世代シーケンサーを用いて、我が国の養殖クルマエビで発生したWSSV複数株のゲノム配列を決定した。国内外の分離株を交えた比較ゲノム解析の結果、国内各地で報告されるWSSVは、いずれも1990年代初頭に中国から世界各地へと拡散したウイルスが各地に定着したものであると考えられた。我が国に定着したWSSVは地域ごとに特徴的なゲノム配列を有しており、これは宿主域や病原性の差異に寄与している可能性がある。今後、更なる試料収集と比較解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまずエビへのDNA導入の至適条件の検討と、導入した遺伝子の効率的な発現のためのプラスミドの構築を行ったが、効率良くエビに外来DNAを導入し発現させることが困難であった。甲殻類ゲノム中に残された内在性ウイルス配列についても進捗があった。今後、ゲノムにコードされている遺伝子の比較解析によりWSSVの病原性メカニズムの解明やニマウイルスの分子進化についてより詳細に研究を発展させることが期待される。化石ウイルスの宿主ゲノムへの挿入メカニズムについて解明するために、エビのゲノムに存在する遺伝子と化石ウイルスに存在する遺伝子の機能についての研究にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
クルマエビ類への外来遺伝子導入法確立のため、培養細胞系の利用も含めて実験プロトコルの改良等に取り組んでいく。また、ロングリードシーケンサー等の新たな実験機器を用いて、甲殻類由来ニマウイルス様配列の詳細な解析を行う。
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Research Products
(4 results)