2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identifying the social determinants of suicide in rural areas and developing a community empowerment model for suicide prevention
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19J21563
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 万里子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 自殺 / 農村 / 健康格差 / 移民 / 農業 / ジェンダー / 日本 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.地域で盛んな農業の種類と自殺率の関連:農村は都会より自殺率が高いことが世界各国から報告されているが、農村のどのような地域環境が自殺率に関係しているのかを検証した研究は限られている。稲作、野菜、酪農や畜産など、地域で盛んな農業の種類によって、作業内容や働き方、歴史など多くの違いがある。そこで申請者は、政府公表のデータを用いて酪農・畜産が盛んな市町村と農作物生産が盛んな市町村の自殺率を比較した。その結果、酪農・畜産産出額が高い地域では低い地域より自殺率が高かったことが明らかになった。この傾向は男女ともに見られ、過去25年間一貫していた。酪農・畜産が盛んな地域では、助けを求めるのが難しかったり、心身に負担の多い働き方をしている人が多い可能性がある。さらなる調査を行って原因の解明に努めるとともに、自殺予防対策を進めていく必要があることが示唆された。 2.出身国ごとの都市-農村の自殺率格差:スウェーデン全国民のレジストリデータ解析の結果、都市より農村において男性自殺率が高い傾向が見られた。都市-農村の自殺率格差の大きさは出身国によって異なっており、外国生まれの人において自国生まれの人よりも、より農村的な社会環境の影響を受けていることが示唆された。農村的な市町村において経済的資源や雇用機会等が少ないことや、農村コミュニティにおける外国生まれの人に対する差別や偏見等が、農村の男性の高い自殺率の背景にある可能性がある。今後メカニズムの解明や予防方法についてさらなる研究を進めていく必要性が示唆された。 3.酪農分野のジェンダー規範の変化と精神的健康:困ったときに他者へ助けを求めることを阻害する男らしさという規範は、地域のコミュニティ特性に影響を及ぼし、農村の自殺に関係する可能性がある。そこで本研究では酪農業界で働く女性・男性を対象に参与観察及びインタビュー調査を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.地域で盛んな農業の種類と自殺率の関連:本研究成果をまとめた論文が2019年6月に査読付き国際学術誌Suicide and Life-Threatening Behaviorに掲載された。また、この論文は2018年1月~2019年12月に当該誌において出版された論文中上位10%に多くダウンロードされたことを示すTop Downloaded Paper 2018-2019に選ばれた。 2.出身国ごとの都市-農村における自殺率格差:申請者はスウェーデン・ストックホルム大学のDepartment of Public Health Sciencesの研究者とともに国際共同研究を進めてきた。本研究成果の中間解析結果を2019年6月にエジンバラにて行われたThe 11th International Society of Social Capital Research meetingにて口頭発表し、フィードバックを受けた。研究成果をまとめた論文は、2020年3月に査読付き国際学術誌Social Science & Medicineに掲載された。また現在さらなる解析を進めており、2020年10月にエジンバラで行われる予定の査読付き国際学会Understanding Inequalities Conference 2020で口頭発表を行う。 3.酪農分野のジェンダー規範の変化と精神的健康:今年度は、地域の酪農女性グループとともにワークショップを2回(根室地域およびオホーツク地域)行い、その参与観察を行った。その活動は北海道新聞(オホーツク地域版「酪農女性、心の健康話し合う」、2020年1月30日)に取り上げられた。現在インタビュー調査データとともに、分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
■出身国ごとの都市-農村における自殺率格差:スウェーデン・ストックホルム大学の研究者と協力し、さらなる解析を進め、農村において自殺リスクが増加するメカニズムを明らかにしていく。既に解析を終えている結果をまとめ、国際学術誌への投稿準備を進めてゆく。 ■酪農分野のジェンダー規範の変化と精神的健康:これまでに収集したインタビュー調査データおよび参与観察データの分析を進めていく。 ■日本における都市-農村の抑うつ格差:自殺を予防するために重要な要因である、抑うつに焦点を当てて研究を行ってゆく。全国39自治体に居住する健康な高齢者を対象とした、日本老年学的評価研究(JAGES)の横断データを用い、都市と農村の抑うつの有病割合の格差を明らかにする。さらに、どのような社会環境要因が都市と農村の抑うつ格差に影響しているのか明らかにしてゆく。本研究は国内学会で成果発表を行い、フィードバックを受けたのち、国際学術誌への投稿へ向けて準備を進めていく。
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Research Products
(10 results)