2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Observational Research on High-Energy Gamma-Rays from Neutron Star Mergers
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19J21578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津名 大地 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子星合体 / ブラックホール / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
Advanced LIGOによって検出された中性子星合体イベントGW170817とそれに付随した多波長の電磁波観測から、連星中性子星合体から引き起こされる様々な放射についての理解が得られた。一方でジェット放出に伴う電磁波放射や合体後の残骸を理解することは、未解明な高密度状態方程式やジェットの放出機構などの解明のために重要であるが、現在多くの謎が残っている。本研究課題ではGW170817では詳しくプローブされることのなかった高エネルギーガンマ線観測に主に着目し、中性子星連星合体に付随する放射の理論計算を行い、観測戦略を提案・実践することを目標としている。
本年度は、主に中性子星合体からブラックホール形成された場合の形成直後の重力波放射についての研究を行った。GW170817周辺の重力波データの再解析から、合体後形成されたブラックホールから量子重力理論で予言される重力波エコーと整合する信号の存在が報告されている。我々はこのような回転ブラックホールからの重力波エコー信号を計算する枠組みを構築し、報告されているGW170817の信号が合体直後のブラックホールからのエコーとして説明可能であることを示した。またこのようなエコー信号は中性子星合体起源のブラックホールだけでなく、大質量星起源のブラックホールからも、次世代の重力波干渉計で地球から10Mpc程度の距離まで検出可能であることを示した。これらの成果をまとめた論文がPhysical Reviews D から出版された (Oshita, Tsuna, Afshordi 2020a,b)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子星合体からのブラックホール形成に付随する重力波信号をモデリングすることで、重力波から合体後の残骸をプローブできる新たな可能性を提唱し、2報の論文として報告することができた。また研究課題の重要事項の一つである、中性子星合体に付随する高エネルギーガンマ線放射のモデリングも進行中である。現在、ジェットの構造を仮定したときの高エネルギーガンマ線の放射を計算し、将来のガンマ線望遠鏡による検出可能性を見積もる部分は完成している。さらに本研究課題の発展として、大質量星からブラックホールが形成されたときに付随する高エネルギー放射を計算する新たなプロジェクトを始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、まずは様々なジェットの構造を仮定したときの中性子星合体からの高エネルギーガンマ線放射の計算コードを完成させる予定である。これらの理論モデルをベースとして、重力波・高エネルギーガンマ線の同時観測が可能になった場合に観測データから合体後の残骸やジェットの構造に制限を与える枠組みを整備する。なお新型コロナウイルスの影響でAdvanced LIGOなど重力波の合同観測計画は現在中断しており、次の観測のスタートは研究期間終了後の2022年夏を予定している。したがって実際の観測データを用いての研究は難しいため、自身の計算コードから生成された模擬観測データを用いて研究を行う。
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Research Products
(16 results)