2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular and circuit mechanisms underlying proprioceptive feedback-dependent motor development
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19J21596
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ZENG XIANGSUNZE 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 運動回路 / 感覚フィードバック / 電気シナプス / IP3受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
母親の体内で手足を動かすヒトの胎児のように、多くの動物はまだ子宮や卵の中にいる発生期から運動を開始する。このような自発的な活動の意義についてまだ明らかになっていない。本研究ではショウジョウバエの胚発生過程において、自発的な活動パターンによって活性化される感覚フィードバックが運動回路への影響を探ることを目的とした。 これまでの研究により、1)体性感覚を特異的に阻害する変異体を利用することで、感覚フィードバックが運動パターンの形成において重要な役割をもつことを示した、2)体性感覚フィードバックが働きかける中枢神経回路(M/A27h回路と呼ぶ)を同定し、M/A27h回路が電気シナプスを介して繋がっていることとこの回路が運動系の発達に必須であることを示した、3)感覚フィードバックを獲得するために、M/A27h回路がIP3受容体を介して、細胞自身の小胞体からカルシウムを放出することで自発的に活動し、電気シナプスを介して筋肉を収縮させることが分かった。以上の結果から、M/A27h回路は運動系の発生初期において自発的に筋肉を動かし、体性感覚のフィードバックを通じてそれら自身の神経結合を制御することで、適切な運動回路を発達させることを示唆している。 今まで発生過程において回路が全体として統合のとれた機能を適応的に発達させる仕組みを細胞レベルで調べた研究は限られている。本研究ではショウジョウバエ胚・幼虫において、高度な遺伝子操作、電気生理学等の技術を結合することで、発生期における感覚フィードバックの役割に初めて迫ることができると考えている。本研究により感覚フィードバックによる運動回路形成制御の基本メカニズムを分子―回路―行動の階層を貫き明らかにすることができれば、ヒトを含めた高等動物の運動回路形成の理解に大きく貢献できると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
いままで本研究は当初の予定通り、運動回路の発達において特に重要である神経回路および神経結合を同定し、運動系において特に重要な役割を示した上で、さらに当該回路の自発活動は感覚フィードバックとの相互作用の仕組みを明らかにした。以上の理由で本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果により、M/A27h回路の自発活動はIP3受容体を介して細胞自身の小胞体からカルシウムを放出することで生成している。また、MとA27hニューロンはギャップ結合で繋がっているだけではなく、中枢神経系において多くの細胞とも結合していることを見出している。これらの結果から、M/A27h回路自身が作り出したIP3はギャップ結合を介して他の細胞に広がり、細胞質のカルシウムを放出することによって細胞間で起こるカルシウム濃度上昇の波状伝搬(calcium wave)を生成することを示唆している。この仮説を検証するために、今後は以下の研究計画を立てる。 1.パッチクランプ法をカルシウムイメージングと組み合わせ、ガラスピペットからIP3をM/A27h回路に導入し、同時に全脳イメージングを行い、実際calcium waveがIP3の導入によって生成されるかどうかを調べる。 2.上記の実験でwaveが起こった場合は、ギャップ結合とIP3シグナリング経路の阻害剤を用いて、同じ方法でcalcium waveの生成への影響を調べる。 3.Calcium waveが起こる領域を調べるために、すでに電子顕微鏡で再構築されたショウジョウバエ幼虫の中枢神経系のコネクトーム情報を利用し、以上のメカニズムで作動するネットワークを構成する候補細胞を大まかに絞り込む。それらの候補細胞を特異的に標的するGAL4を用いて、パッチクランプ解析を行い(dual recording)、M/A27h回路との関係を電極生理レベルで調べる。 4.上記のcalcium waveは実際幼虫の運動に対する影響を調べるために、RNA干渉法を用いて候補細胞のギャップ結合とIP3受容体をそれぞれノックダウンし、行動解析を行う。
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