2020 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular and circuit mechanisms underlying proprioceptive feedback-dependent motor development
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19J21596
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ZENG XIANGSUNZE 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | motor development / gap junction / IP3 signaling / GPCR / pacemaking activity / proprioceptive feedback |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では運動制御、回路発達の諸要素を遺伝学的に解剖可能なショウジョウバエの胚・幼虫をモデルとして、運動回路の発達を制御する仕組みを調べている。これまでの結果は、胚発生過程における未熟な行動出力は感覚フィードバックを介して成熟な運動回路を発達させることを示し、また感覚フィードバックの作用を受けて機能を発現し中枢パターン生成回路形成の足場として働くようなギャップ結合依存性の神経回路を同定している。さらに今年度では、この足場回路において自発的な神経活動を促す分子基盤及びこの自発活動が他の細胞をリクルートし、完成回路に編成する可能性を調べてきた。具体的に以下の研究結果が得られている。 1)足場回路は運動回路形成の最初期からIP3シグナリングによって、小胞体に蓄積しているカルシウムを放出することで自発的な神経活動を生成し未熟な運動出力を促す。また、遺伝学スクリーニングを用いて、IP3シグナリングを促すためのGタンパク質共役受容体(GPCR)を大まかに絞り込んだ。 2)IP3は細胞内の信号物質であるが、足場回路はギャップ結合で周辺の神経細胞と繋がっていることからこの回路に生成したIP3はギャップ結合を介して周りの細胞に伝搬し、各細胞の小胞体内にあるカルシウムを細胞質に放出させること(calcium wave)でこれらの細胞(及び構成する回路)に生理的な影響を与え、大規模な運動回路の発達に貢献する可能性を示唆している。実際足場回路にパッチクランプ法を介してIP3を導入したところ、calcium waveが引き起こされたことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いままで本研究は体性感覚を担うニューロンの機能を特異的に阻害する遺伝子操作により、運動経験の感覚フィードバックが胚発生期における運動回路の発達に必須であることを示すことに成功し、また感覚フィードバックが働きかける神経回路および神経結合を同定した。今年度は運動回路の発達における一連の流れの元となる未熟な行動出力を促す神経活動の生成に関わる分子メカニズム及び原始的な運動回路が完成回路に編成する分子機構を部分的に解明してきた。これらの理由で本研究は当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は運動回路の発達における一連の流れの元となる未熟な行動出力を促す神経活動の生成に関わる分子基盤を調べていく。このため、中枢パターン生成回路形成の足場として働くような神経回路(M/A27h回路)に着目する。これまでの結果により、M/A27h回路はIP3シグナリング依存的な自発活動を生成することで未熟な行動出力を促すことが分かっている。また、IP3はGタンパク質共役受容体(GPCR)の活動によって生成されると一般的なメカニズムとして知られているが、GPCRは多くの種類が存在し、それぞれ異なる遺伝子によってコードされるため、実際にどのGPCRがIP3シグナリングを介してM/A27h回路の自発活動を促すのかはまだ分かっていない。いままで行動レベルでスクリーニング実験を行い、候補となる遺伝子を大まかに絞り込んだ。今後はカルシウムイメージングを用いてこれらのGPCRをそれぞれ阻害した時に、M/A27h回路の神経活動に影響を与えるかどうか、さらに免疫組織化学を用いて、実際ヒットしたGPCRがM/A27h回路のどこに位置するかを調べていく。 また、原始的な運動回路が完成回路に編成する分子・細胞機構についても調べていく。これまで予備的な結果により、M/A27h回路に生成されたIP3はギャップ結合を介して周りの細胞に伝搬し、各細胞の小胞体内にあるカルシウムを細胞質に放出させること(calcium wave)を示唆している。今後はカルシウムイメージングを色素カップリングと組み合わせてIP3の伝搬対象となる細胞を同定し、またRNA干渉を用いてcalcium waveは実際これらの細胞(及び構成する回路)にどのような生理的な影響を与えるかを調べていく。
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