2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development and properties of functional molecules based on multiply meso-functionalized subporphyrins
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19J21609
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黄瀬 光稀 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ヘテロナノグラフェン / ヘテロヘリセン / アミノ化 / 固体蛍光 / フラーレンとの会合挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
コラニュレンは球状分子フラーレンの部分構造であり、お椀型の構造を持つ五回対称性の分子である。この周辺部五か所に置換基を導入し、その構造物性相関を調べる研究が過去に精力的に展開されてきた。しかし、窒素やリンといったヘテロ原子をを周辺部に五か所導入したコラニュレンは未だ合成例がない。この原因の一つに、適切な前駆体の不足が挙げられる。過去には五重塩素化コラニュレンや五重ホウ素化コラニュレンが報告されてきたが、こうした化合物を遷移金属触媒反応に利用する際には基質に制約があり、高価で不安定な配位子を使用する必要があるなどの問題点があった。このような状況の下、申請者は五重臭素化コラニュレンおよび五重ヨウ素化コラニュレンを合成する手法を確立した。この手法の利点は、(1)収率が高いこと、(2)大量合成が可能であること、(3)空気下での簡便な反応条件で高い再現性が見られること、(4)これまで合成困難であった周辺部五置換コラニュレンの有用な前駆体となりうることが挙げられる。実際、これらの分子の価値を実証するため、周辺部五重ホスホリル化コラニュレンを初めて合成することにも成功した。 さらに、申請者の開発した五重ハロゲン化コラニュレンの有用性を示すため、五重窒素化コラニュレンの合成に着手した。多段階合成の結果、コラニュレンの周辺部五か所に窒素原子が組み込まれた分子を合成することに成功した。この分子の特徴は、(1)窒素に由来する高い電子供与性を示すこと、(2)らせん状にねじれたアザヘリセン骨格を五つ有することである。これらの特徴に注目し、フラーレンと相互作用し蛍光が減衰する性質を明らかにし、これまでのボウル状分子よりも高い会合定数をもつことが示唆された。また、アザヘリセン骨格のねじれ方とエネルギーの関係を量子化学計算を用いて考察し、最安定と考えられる異性体が実際にX線結晶構造と一致することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初申請者はサブポルフィリンの三か所のメゾ位が無置換となった分子を合成し、それをもとにサブポルフィリンの周辺部三か所にアザヘリセン骨格を有する分子を設計していた。しかしながら、研究の起点となる三か所メゾ位無置換のサブポルフィリンが低収率でしか合成できず、なおかつ大スケール合成ができないという欠点があった。そこで申請者は反応の条件検討を重ねて効率的合成方法を追求したが、顕著な改善は実現しなかった。そこで、対称性の高い多重アザヘリセン骨格分子を構築するというコンセプトを実現するため、サブポルフィリンと似たお椀型を有するコラニュレンを用いて研究を展開することにした。当初コラニュレンの五重アミノ化は適切な前駆体が無く困難であると思われたが、新たにアミノ化に適した前駆体を合成する手法を独自に開発し、しかも一度で数グラム単位の大量合成が可能となったことで研究を効率的に進めることができるようになった。これを起点とすることで、コラニュレンの周辺部にアザヘリセン骨格を対称的に導入した分子を合成することに成功した。研究が計画通りには進まなかったものの、その過程で基盤とする分子構造や反応条件を柔軟に工夫した結果、当初目標としていた多重アザヘリセンを合成できたという点では意義があったといえる。さらに、合成できた分子の蛍光特性やフラーレンとの会合挙動について詳細に研究し、現在理論計算によりヘリセンねじれやお椀の反転の経路や活性化エネルギーを見積もっている途中であり、現在のところおおむね研究が順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
周辺部窒素埋め込み型縮環コラニュレンの研究に関しては、前年において提唱していたフラーレンとの会合による蛍光減衰現象についてさらにメカニズム解明を目指す。具体的には会合体形成による消光以外にも、分子の接近によるエネルギー移動や電子移動の可能性も現段階では否定しきれないため、蛍光滴定の温度依存性や過渡吸収測定などを通じて会合定数を慎重に決定したいと考えている。その他、この分子の特徴であるアザヘリセン骨格にも着目し、更なる研究を遂行する。まずは、理論計算を通じてヘリセンのねじれ方に由来する異性体間の相互変換経路およびその活性化エネルギーを見積もる。これには通常の量子化学計算の手法では困難であるため、近年普及しつつある人工力誘起反応法を使ったGRRMを利用する。この新しい手法は高度な専門知識を要するため、共同研究者と綿密なディスカッションを重ねながら進めていく。計算の結果、各異性体間の活性化障壁が十分に高いと見積もられれば、キラルカラムを装着した高速液体クロマトグラフィーを使ってキラル分割をし、アザヘリセン骨格に由来する円偏光二色性や円偏光発光を詳しく調べたい。本研究課題も本年度中に論文執筆ならびに投稿まで完了させる。 その他、本年度は新たにコラニュレンの周辺部にイミン型窒素を導入した縮環コラニュレンの創出に着手する。現段階で実際にカップリング反応によりイミン型窒素を導入するところまで成功しているので、今後は分子内縮環反応を検討したい。具体的には、光反応や酸化的縮環反応、パラジウム触媒による分子内C-Hアリール化反応などを想定している。
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Research Products
(5 results)