2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of relationship between swimming movement and Ca2+ oscillation in the motor ganglion of developing ascidian embryo
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19J21665
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
赤星 太一 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 神経発生 / 運動ニューロン / 細胞系譜 / カルシウム振動 / 膜電位測定 / 自発的な運動行動 / 脊索動物 / カタユウレイボヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
遊泳動物(ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、ホヤ)は発生過程において、遊泳運動前に自発的な運動行動を示す過程を経る。これらの自発的運動行動がどのように生じるかを理解することは遊泳運動がどう達成されていくのかを理解するうえで重要である。しかしこの自発的運動行動を生じるまでに至る機能的な神経回路形成の過程については明らかでない。特にいつ、どのニューロンが初めに活動をし、これらの自発的運動行動を引き起こすのかについては明らかでない。カタユウレイボヤ幼生は、中枢神経系がわずか177個のニューロンで構成されている点、また運動ニューロンを含む特定のニューロン群についての細胞系譜が既知であることから、本研究において適切なモデル生物である。以前までの研究より、私はホヤ中期尾芽胚期に1対の細胞でCa振動が生じることを見出している。 現在までの研究実績として、私はCa振動を示す細胞の細胞系譜、またCa振動と自発的運動行動との関係を明らかにした。細胞系譜同定の結果、Ca振動を示す細胞は1対の運動ニューロンに相当すると分かった。またCa振動と膜電位の同時イメージングをした結果、バースト発火がCa振動と共に観察された。またハイスピードカメラを用い、運動行動の発生過程を撮影し、定量化した結果、遊泳運動前にバースト発火に対応する自発的運動行動を示すことが分かった。次に中期尾芽胚期にCa振動を示す細胞の細胞破壊をおこない、個体の運動を定量化した。その結果、細胞破壊をおこなった一部の個体で遊泳運動前に生じる自発的運動行動は見られなくなった。以上の結果は、Ca振動を示す細胞は自発的運動行動において不可欠な要素であることを示唆する。本研究成果を10th International Tunicate Meetingでポスター発表をした。また第42回日本分子生物学会年会において口頭発表およびポスター発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1、Ca2+振動をする細胞の細胞系譜同定に成功したこと 2、ホヤにおいて今までおこなわれていなかった膜電位イメージングをおこないバースト発火とCa2+振動、遊泳運動前にみられる自発的運動行動との関係を対応付けることができたこと
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Strategy for Future Research Activity |
まずは前年度までの結果を論文としてまとめるため、必要な追加実験をおこなう。その上で、現段階で今後は次の4点に注力したいと考えている。1. Ca2+振動(周期的なバースト発火)を示す運動ニューロンは抑制後リバウンド発火を示すか検証する。2.実験条件を改善し、ACINの神経活動をイメージングする。3. Ca2+振動を示す運動ニューロンは1細胞へ単離してもCa2+振動を示すか検証する。4. Ca2+振動に伴う、筋肉細胞の周期的な収縮は筋分化に影響を与えるか検証する。 1.今までの観察からCa2+振動と自発的遊泳運動とに関係があることが推察される。Ca2+振動を示す運動ニューロンと抑制性介在ニューロンACINの投射関係より、ACINからの抑制性の入力が引き金となり、運動ニューロンが興奮すると仮定するとリズミカルな筋収縮が説明できることから、Ca2+振動を示す運動ニューロンが抑制後リバウンド発火の機構を備えているかを検証する。 2.前年度にACINのライブイメージングを試みたが、現在までのところ神経活動を捉えるまでに至っていない。センサーの種類や発現量、顕微鏡倍率を変更するなどし、ACINの神経活動を捉え、Ca2+振動を示す運動ニューロンとの関係を検証する。 3.1細胞に単離したうえでCa2+振動を示すか調べ、その活動が自発的であるかどうかを検証する。 4.Ca2+振動に伴い、筋肉細胞は周期的に収縮をする。このことから筋肉細胞の周期的な収縮と筋分化との間に関係があるのではないかと考え、これを検証する。
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