2019 Fiscal Year Annual Research Report
筋骨格ヒューマノイドにおける道具操作拡張身体像の逐次獲得と剛性可変適応行動の実現
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19J21672
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河原塚 健人 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 筋骨格構造 / オンライン学習 / 柔軟身体 / 可変剛性 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋骨格ヒューマノイドは多数の生物規範型の利点を有すると同時に, その柔軟で複雑な身体の制御は難しい. しかし, その柔軟性を克服し身体の剛性を自在に操ることができれば, これまでにない形で環境適応行動が実現されると考える. この目的のため, 本年度は主に, (1)冗長センサを有するハードウェア設計, (2)安定した身体モデル更新と可変剛性制御, (3)動的な身体モデルの構築と正確な制御, について扱った. (1) 環境適応行動のためのプラットフォームとして, 全身に冗長なセンサを有した筋骨格ヒューマノイドMusashiを設計開発した. 全身がモジュラー化されており, 筋配置や関節構造を様々に変化させることができる. また, 筋張力・筋長・筋温度を測定できるだけでなく, 関節角度を測定可能な関節モジュール・高解像度カメラを2つ有した可動眼球・多数の接触センサを持つ柔軟ハンド・接触面全体の力を測定できる足ユニットを搭載した. (2) 開発したMusashiの関節角度・筋張力・筋長の関係を表すニューラルネットワークを実機センサデータからオンラインで更新し, 正確な状態推定・制御・シミュレーションを行う手法を開発した. 本モデルは3時間の長期的オンライン学習にも成功した. また, このネットワークを使って山登り法により身体剛性を変化させることにも成功した. (3) リカレントニューラルネットワークを用いて状態方程式を獲得し, 柔軟身体を動的かつ正確に制御することに成功した. 複雑なダイナミクスを含むペダル操作や把持安定化制御への応用に成功し, 素早く環境に適応するために欠かせない要素となった. 開発したコンポーネントを用いて, ハンマーを使った動作・掃き掃除・車運転動作等の環境適応行動について実験を行ってきている. より長期的行動のため, 今後認識・動作計画のシステム開発を行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画はハードウェア設計・安定した身体モデル獲得・動的な身体モデル構築の3つの項目であった. ハードウェアは今後環境適応行動を行っていくプラットフォームとして重要な位置づけを占める. 筋に関係するセンサだけでなく, 目や手・足にも他のロボットに比べ多くセンサを配置することに成功しており, 目的に叶うハードウェアが完成したと言える. 安定した身体モデル獲得では, 3時間もの間オンライン学習を続けることが可能と分かり, 高い安定性を示すことができたと言える. また, 能動的な身体剛性変化は可能になったものの, その利用はハンマー動作に限られ, 今後応用先を増やしていく必要がある. 動的身体モデルについては, ペダル操作と把持安定化に適用され, どちらも高い性能を示すことができた. 今後, 道具/環境情報や剛性情報をモデルに埋め込み, 巧みな環境適応行動を行っていく足がかりが出来たと言える. それぞれの項目について, 国際学会または学会誌を発表してきている. これらの理由から, 本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として, 主に(1)道具拡張身体像の構築, (2)可変剛性・道具操作を伴う環境適応制御の開発が挙げられる (1)現在まで自己身体像は身体内部に備わるセンサ間のネットワークとして定義されており, その身体中に閉じた空間で扱われていた. しかし, 環境をも含むある種の道具操作のためには, 自己身体像の中にそれらの影響・ダイナミクスを取り込む必要がある. その内部状態を逐次的に更新していくことで, 環境を含む道具に適応し, そのダイナミクスを利用して自身の動作を拡張, または制限して動作していくことが可能となる. (2) 筋骨格構造特有の可変剛性機構を活かし, その変化を環境適応行動に対して能動的に利用していく必要がある. そのためには視覚や接触覚による現在状態の認識と, それを元に素早く剛性を適応し,道具を使ってタスクをこなしていく必要がある. 剛性操作の行動計画への導入とタスク状態の認識が鍵となる. その他, ハードウェアの改善も考えられる. 環境接触を伴う動作における現在状態の認識には視覚や手と足の接触センサだけでなく, 全身にかかる力を測定する必要がある可能性が考えられる. そのため, 全身の皮膚による接触判定や関節の内圧センサによる負荷の測定についても実装・実験を行っていく.
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