2020 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な形状の断層における地震破壊の数値シミュレーション研究
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19J21676
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 創 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 地震 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は以下の課題に取り組んだ。 (1)複雑形状断層における余震系列の数値シミュレーション:前年度より取り組んでいた、本震余震系列シミュレーションをさらに進めた。数値シミュレーションにより主断層の破壊後、一部の小断層が本震による応力擾乱を受けて自発的に破壊に達するのが再現された。そして(1)断層に沿った余震分布、(2)時間減減衰に関する大森則、(3)余震発生領域の拡散、(4)多様な震源メカニズム解など、普遍的に見られている余震活動の性質を同時に再現することに成功した。これらの結果は 12 月に受理され、Journal of Geophysical Research から出版された。 (2)長大非平面断層における地震サイクルシミュレーション:単純な非平面断層について、地震シーケンスシミュレーションにより破壊が停止する条件を調べた。この際、大きな断層に特有の有限幅の効果を取り入れるために、新たに 2.5 次元という計算手法を開発した。これは、3次元の積分核を断層の深さ方向に積分することで、3 次元シミュレーションを 2 次元と同じ計算コストで近似する手法である。開発した手法を用いて、単純な非平面断層の長期のシーケンスシミュレーションを行った。断層における法線応力の不均質性が臨界値を超えると、周期的な完全破壊から複雑な部分破壊に遷移することを見出した。また、この臨界値の値を定量的に説明する、破壊力学ベースの理論を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度より取り組んでいる余震系列の数値シミュレーションについて,研究成果をまとめ論文として出版した.この論文では,断層の非平面構造が観測されている余震の時空間およびメカニズムの特徴 を統一的に説明可能であることを示した点で重要な成果であると言える,また,年度後半は新たに 2.5 次 元近似を用いた境界積分法を実装し,長大横ずれ断層のシミュレーションを行った.これにより,断層が 曲がっていることによる破壊停止を再現することに成功し,同時に断層幅や特徴的震源核サイズなどの 様々なパラメータ依存性が明らかになった.さらに,このパラメタ依存性を定量的に説明する理論モデル の構築に成功した.以上より期待通り研究が進展したと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
屈曲断層の地震サイクルシミュレーション研究をさらに進める。パラメタ研究を進め、破壊力学に基づいた理論でシミュレーション結果がどの程度説明可能か考察する。また、観測データとの比較として、(1)破壊停止確率に関する古地震学的な経験則、(2)カリフォルニアなどの自然断層の長期的滑り速度のデータ、を行う。
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Research Products
(3 results)