2020 Fiscal Year Annual Research Report
中国語文学における「現代主義」的思考様式の形成と変遷――穆時英・戴望舒を起点に
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19J21689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雄大 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 現代主義 / 個性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は後述する二つの論文が刊行されたことにより、研究課題全体の枠組みがより明らかになった一年間であったと言える。研究課題である中国語文学における「現代主義」的思考様式の形成と変遷について、当初は穆時英および戴望舒という二人の作家を起点に考察を進めてゆく予定であったが、昨年度はそこから一度離れ、「現代派」と呼ばれる詩人たちを理論的に支えた諸詩論における個性の問題へと焦点を絞って考察を行った。 一つ目の論文は、「廃名『談新詩』における作者の個性の重視――自己表現としての「夢」の発展的継承」である。同論文では廃名の「説夢」という短いエッセイを手がかりに、彼の唯一のまとまった詩論である『談新詩』の分析を試みた。 二つ目の論文は、「李健吾詩論における個性と現代性――その卞之琳評を中心に」である。同論文では「現代派」を代表する詩人の一人である卞之琳について、同時代の批評家である李健吾がどのような論理を以て肯定したのかという点について考察を行った。 以上のように、昨年度は具体的な対象としては、廃名と李健吾の詩論という二つのケースしか扱うことができなかった。しかしそれら二つの詩論の検討を通じて、個人性や作家性、および詩的言語というキーワードを軸に、中国の「現代主義」文学ならびにその思考様式について考察することの有効性と可能性が徐々に見えてきたと言える。この方向性に基づきながら、今年度は更に分析対象を広げて、研究を進めてゆくことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象の変更という大きな変化はあったものの、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
廃名と李健吾の詩論という二つのケースの検討を通じて見えてきた、個人性や作家性、および詩的言語というキーワードを軸に、中国の「現代主義」文学ならびにその思考様式について考察することの有効性と可能性について引き続き探ってゆきたい。
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