2020 Fiscal Year Annual Research Report
幾何的手法による志村多様体および局所Langlands対応の研究における新展開
Project/Area Number |
19J21728
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沖 泰裕 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 志村多様体 / Rapoport-Zink空間 / 数論的交叉理論 / 数論幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, 前年度に得られたスピノル群に対するRapoport-Zink空間の底空間の構造の記述に関する結果の応用について研究した. 1つ目の研究成果は, He-Li-Zhuの結果の変種の構成による数論的交叉理論への応用である. 具体的には, 前年度の研究で構成した超スペシャルレベルのRapoport-Zink空間への閉埋め込みに対して数論的Gan-Gross-Prasadサイクルを定義し, 一部の場合にその交点数の計算を行った. 2つ目の研究成果は, スピノル群に対する志村多様体のbasic locusの構造の記述である. この結果の証明には, 志村多様体のbasic locusがRapoport-Zink空間の商の有限和としての記述されることを主張する「p進一意化定理」が必要となる. しかし, 今回の場合にはそれが証明されていない, という困難が生じた. そこで, p進一意化定理をスピノル群の場合を含むより一般の場合に拡張することで問題を解決した. 以上の結果はすべて論文としてまとめ, 国内のいくつかの研究集会で発表を行った. 一方で, 志村多様体の連結成分に関する研究にも着手した. 具体的には, pでのレベルを固定した志村多様体の射影系に対し, それらの連結成分全体の集合の射影極限を考える. その集合へのpと互いに素なHecke作用が推移的かどうか, という問題を研究した. 本年度は奇数変数CMユニタリ群の場合について調べ, CM体が有理数体上アーベル拡大のときに推移性の十分条件の証明および反例の無限族の構成を行った. これらの結果については, 現在論文を作成中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに, Rapoport-Zink空間の結果の数論的交叉理論への応用の1つを得ることができた. また, 志村多様体のbasic locusの構造を記述する研究の過程で, p進一意化定理の拡張に成功した. この結果は, 志村多様体のbasic locusの構造の記述にとどまらない幅広い応用が期待される. 志村多様体の連結成分の研究は, 前述したp進一意化定理の拡張の際に現れた問題である. この問題は本来の目的で本質的な困難とはならなかったが, 他の研究でも同様の主張が用いられると判明した. その一方で, 悪い還元をもつ場合に問題を具体的に考察した論文は存在していなかった. したがって, 研究実績で述べた成果は, 志村多様体の数論幾何において有意義なものと考えられる. 特に, 推移性に関する反例の存在は, 志村多様体の悪い還元を理解することの困難性を表すものと言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
志村多様体の数論的交叉理論への新たな応用について考察する. そのために, 近年になって発達した, ユニタリ群に対する数論的交叉理論の手法を取り入れることを検討している. 志村多様体の連結成分の研究を他の群に対しても実施する. 例えば, 直交群に対して同様の研究を推進し, 推移性の十分条件の証明および反例の構成を行う.
|