2020 Fiscal Year Annual Research Report
環境エネルギーによって駆動するハイドロゲルマイクロロボット
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19J21735
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 光輝 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 刺激応答性ゲル / マイクロロボット / 自律制御 / 外部環境センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は外部環境に遍在する温度や光からエネルギーを供給するシステムを設計することで,外部環境に応じた推進制御が可能なマイクロロボットの構築を目指した研究である.2020年度は計画していた有限要素法を用いた螺旋状マイクロロボットの変形シミュレーションおよび刺激応答性と磁場応答性を有する螺旋状マイクロロボットの構築を達成した. はじめにフォースゲージと1軸ステージを導入することで螺旋状マイクロロボットの変形シミュレーションに用いるハイドロゲルのヤング率および熱収縮率の測定に成功した.刺激応答性ゲルをパターンした二層ファイバの実験結果とシミュレーション結果を比較することで,変形シミュレーションの妥当性を確認した.螺旋状マイクロロボットのパターンを変化させた時の変形挙動を観察し,推進制御に適したパターンを明らかにした. 次に,螺旋状マイクロロボットへの磁場応答性付与のために,磁性ナノ粒子をアルギン酸カルシウム (非応答性ゲル)とNIPAm-co-AAC (刺激応答性ゲル)にそれぞれ分散した場合の回転磁場への応答性を観察した.また,磁性ナノ粒子を刺激応答性ゲルに分散させた場合の温度応答性を測定した.前年度作製したマイクロ流体デバイスを用いて刺激応答性ゲルをパターンした螺旋状マイクロロボットの構築に成功した.螺旋形状マイクロロボットの変形シミュレーションおよび構築手法に関して,MEMS2021(オンライン,1/26)でのポスター発表を行った.また,螺旋状マイクロロボットの外部環境に応じた推進速度制御に関して国際論文誌Advanced intelligent systemsに採択され,表紙に選出された. 螺旋状マイクロロボットに刺激応答性ゲルをパターンすることで,外部環境に応じた推進制御が可能であることが実証できたことは本研究の目的を達成する上で非常に重要なことである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は計画していた有限要素法を用いた螺旋状マイクロロボットの変形シミュレーション,刺激応答性と磁場応答性を有する螺旋状マイクロロボットの構築および外部温度に応じた推進速度制御を達成した.計画していた事項を達成したため,概ね順調に研究が進展したと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,非拘束型マイクロロボットに適した推進方法および外部環境センシング機能の構築を行う.2020年度までの研究で磁場を用いた推進方式では推進挙動に制限があることが明らかになった.そのため,非拘束型マイクロロボットに提起した推進方法について検討する.現在,マランゴニ推進と呼ばれる液体の表面張力差によって推進する方法がマイクロスケールの推進に適していると考えている.2020年度構築した観察セットアップを用いて,推進速度や駆動可能時間などの測定および評価を行う.次に,外部環境センシングのための適した刺激応答性ゲルの開発を行う.具体的にはコロイド結晶と刺激応答性ゲルを組み合わせることで,外部刺激を色変化に変換することが可能なセンシング素子を開発する.外部環境のセンシングに適したセンサを構築するために,コロイド結晶の密度やハイドロゲルの濃度,架橋比の検討を行う.次に,マイクロボットは小型化に向けてフォトリソグラフィなどによって構築可能なデザインを検討する.具体的にはPDMSなどのエラストマーを微小なモールドを用いて型取る手法を用いる予定である.さらに,センシング用刺激応答性ゲルと非拘束型マイクロロボットの統合方法を検討する.刺激応答性ゲルとエラストマーを接着する研究は数多く報告されている.そのため,先行研究に基づいてシランカップリングやベンゾフェノンを用いて刺激応答性ゲルとエラストマーを共有結合させ,接着強度などを評価する.最後に,刺激応答性ゲルを統合したマイクロボットを構築し,刺激応答性ゲルを統合したマイクロボットの推進および外部刺激を印加したときの刺激応答性ゲルの挙動について観察する.本研究で提案する非拘束型マイクロロボットの外部環境センシングに関して,MEMS分野の最高峰の国際学会であるMEMS2022 (Tokyo, 1/9-13) での発表を予定している.
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Research Products
(3 results)